ＦＳＪ通信号外１８７

　　　ＦＳＪ通信

　　　　　　　　　　　　号外３７０　２０１５年４月２３日

※日本ジャーナリスト会議の機関紙「ジャーナリスト」に連載している筆者のコラム「大野晃のスポーツコラム」から２０１５年４月号（２０１５年４月２５日発行）掲載予定の原稿を参考にしていただくため転載致します。　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大野　晃

　　　　　　　　　　◇ご都合主義五輪極まる◇

２０２０年東京五輪の組織委員会がレスリングなど３競技会場を千葉の幕張メッセに変更することを要請し、千葉県知事が快諾した。

すでにバスケットボール会場は埼玉県に変更されるなど、五輪招致の売り物の一つとなったコンパクト五輪は、限りない広域五輪に姿を変えそうだ。

自民党がリードするスポーツ議員連盟は、サッカーくじの売り上げの１０％を新国立競技場の建設費にあてようと、くじの対象をプロ野球やラグビーに拡大する検討に入った。

コンピューターが勝敗を選ぶ方式だから八百長のおそれはないと際限なくスポーツ賭博の拡散を狙っているようだ。

さらには、五輪開催後に神宮外苑地域を大規模再開発して、神宮球場と秩父宮ラグビー場を入れ替えてスポーツ施設群を整備する計画も、サッカーくじの胴元である日本スポーツ振興センターを中心に、民間業者も加えて協議するという。

現実主義者のバッハ会長がリードする国際オリンピック委員会が五輪開催条件を大幅に緩和したとはいえ、これでは賭博収入による理念なき、ご都合主義の、何でもありの五輪開催が極まったと言うしかない。

都民やスポーツフアンの意向を無視して、政財界による身勝手な計画が、「粛々と」進められようとしている。

東京都が大宣伝するのは、交通標識や観光案内の改善により、五輪へ向けて海外からの観光客を大幅に拡大するための「おもてなし」作戦ばかりである。

埼玉県や千葉県も観光宣伝に力を入れる。

海外資金も導入する大規模開発と観光収入を狙った金儲け五輪で、遅れた原発事故対策などを、国内外から隠ぺいしようというのだろうか。

世界へ向けた五輪招致の訴えをかなぐり捨て、世界平和も、スポーツの発展も眼中にないようだ。

相乗り利益にすがってか、マスメディアの点検は皆無に近く、東京五輪の実像がまったく見えない。

改めて五輪開催の意義が問われる。

２０１５年４月１５日記