２０１６年夏季五輪の開催地に福岡市が名乗りをあげると、負けじと東京都が２度目の五輪へ動きだし、国内の五輪招致合戦に火がついた。

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　アジアで初めて開催された１９６４年東京夏季五輪以後、国内では冬季五輪を２度開催したが、夏季五輪開催は、88年大会招致で名古屋市が韓国・ソウル市に敗れ、２００８年の招致でも大阪市が中国・北京市に敗れて実現していない。

　むずかしい課題だけに、石原慎太郎・東京都知事の姿勢に違和感を持った。

　石原都知事は、中国で日本を批判する動きが起こると「北京五輪ボイコット」を内外のマスメディアで公言し、国際オリンピック委員会（ＩＯＣ）に敵対する態度を示した。

　それから半年もたたずに五輪招致表明。

　発言を反省したのかと思ったら「成熟した都市の姿を世界に示す」と都市機能を誇示するばかりで、五輪の意義を強調することはなかった。

　その１週間後に都議会で「国連憲章なんて、まともに信じているばかはいない」と国連を否定する暴言をはいた。

　五輪の最大の目的は「スポーツを通じて平和な世界の建設に貢献する」ことであり、ＩＯＣはスポーツの発展による平和の推進のため、国連との協力連携を強めている。

　国連否定発言は五輪精神の否定に通じる。

　ＩＯＣ委員はじめ国際的に「五輪開催都市の首長としての資格がない」と批判されるのは必至だろう。

　しかも、最近のＩＯＣ総会は50％近くを占めるアジア、アフリカ、中南米のＩＯＣ委員が影響力を持ち、友好関係が五輪招致のカギを握る。

　石原発言は致命的なマイナス材料である。

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　石原都知事は「国立競技場は造り直さないといけない。神宮の周辺は大再開発になる」とぶち上げたが、開発優先の土建屋五輪ということか。

　五輪精神を無視した都市再開発のための五輪招致はスポーツの政治的、商業的悪用にほかならず、五輪憲章はＩＯＣの使命として「反対すること」を特記している。

　運営費だけで３０００億円にも及ぶ夏季五輪開催地の条件として住民の強い支持が不可欠とされる。

　開催後も含め、住民スポーツ環境整備に積極的な姿勢が求められる。

　公共施設整備が進まず、使用料が高騰するなど、東京都が住民スポーツ振興に積極的とは言い難い。

　招致関連費に数十億円を要するとされるだけに、慎重な検討が必要だ。

　石原都知事が暴言を撤回するか、知事が代わらない限り、東京五輪招致は、国際的な恥の上塗りとなるだろう。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２００５年１０月５日記