|
◇パナソニックが堅実に日本一復帰◇
パナソニックが、堅い防御と着実な試合運びで日本一に復帰した。
第５８回日本選手権兼第１８回トップリーグプレーオフ決勝のライバル対決は、試合巧者のパナソニックが攻撃的なサントリーを堅守で抑えて快勝した。
パナソニックの王座は日本選手権で２０１５年度第５３回以来、６回目、トップリーグで同年度第１３回以来、５回目となった。
パナソニックは前半、防御圧力でサントリーのミスを突き、インタセプトから先制トライを奪い、ＳＯ松田力也の２ＰＧとＷＴＢ福岡堅樹のトライで点差を広げ、ＳＯボーデン・バレットの好リードでサントリーにトライされたが、松田がＰＧを加え２３―７と１６点差をつけた。
後半は、サントリーが猛反撃し、開始早々にスピードトライを奪ったが、パナソニックはパワーでトライを重ね、終盤２トライしたサントリーを３１―２６の５点差で突き放した。
パワーとスピードが激突する高レベルの決戦で、パナソニックの強さが遺憾なく発揮された。
レベルの高さの第一は、攻防のスピードアップである。
前半立ち上がりから、サントリーが意欲的に攻めたが、パナソニックの防御は、素早く確実。
防御圧力を受けたサントリーが攻めあぐね、バレットのパスがずれるとＣＴＢディラン・ライリーがインタセプトして、パナソニックに先制トライをもたらした。
スピード豊かな攻撃的防御の進化だった。
後半開始早々、サントリーはスピーディーな突進、展開の連続攻撃。
バレットがパス回しの核となり、オフロードパスでＷＴＢ中靏隆彰のトライを生んだ。
好防御のパナソニックもスピードに振り回された。
ともに、逆襲意欲が高く、相手のミスを見逃さない、したたかな闘いを継続し、スキがなかった。
高いレベルを実感させた第二は、個人能力の成長だ。
パナソニックの松田は４０㍍を超すＰＧを２本成功させるなど、リードを保つＰＧでパナソニックの安定した試合運びを支え、鋭い状況判断の飛ばしパスで福岡のトライを呼び、バレットに負けないゲームメイクぶりだった。
サントリーのＣＴＢ中村亮土主将は、ショートキックで防御の頭上を越えるトライを奪った。
そして、試合運びの駆け引き。
パナソニックは、先手を取って、迫られても着実に加点して、揺るがないリードを維持した。
追うサントリーは、攻撃ペースに巻き込んでパナソニックの防御を崩し、連続トライで逆転を狙って多彩に攻めたが、あと一歩及ばなかった。
パナソニックのＬＯジョージ・クルーズとＣＴＢハドレー・パークスが要所で攻防の核となり、サントリーはバレットが軸になったのは間違いないが、日本代表候補たちが緊迫の決戦を盛り上げて戦い抜いたことで、日本ラグビーの国際的なレベルアップを実感させた。
来年の新リーグも両雄が引っ張って行くことになるだろうが、高いレベルの個人能力を土台にした高度な競り合いで、スリリングなゲームが連続することを期待させた。
世界に誇れるリーグの土壌が作られたが、多くを学んだ日本人競技者がレベルアップを継続できるかが、カギとなるだろう。
ようやく日本代表が本格的に動き出した。
ＦＬリーチ・マイケル主将を先頭に、パナソニック８人とサントリー所属が７人で、第９回Ｗ杯代表が半数を占めるスコッドを編成。
スコッドや代表候補の若手を主体としたサンウルブズと、静岡に１万８４３４人の観衆を集めて腕試ししたが、攻防に結束を欠いて大苦戦。
１３人の第９回Ｗ杯代表が先発した日本代表だが、サンウルブズの思い切りの良い若さ爆発に受け身となり、結束した防御が遅れたうえ、ミスが多く、前半は２トライ２ゴールを奪われ、ＳＯ田村優の１ＰＧだけ。
後半、若手に交代して２０分に初トライ。
押し込みの連続などで３１分に逆転トライを奪い、パワーで突き放した。
若手の奮闘が好材料とはいえ、展開連続攻撃は不発で、課題噴出の再スタートだった。
２０２１年６月１３日記
|
