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大野晃のラグビー通信 |
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第２３７号 ２０２１年５月２３日 |
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◇パナソニックが日本一に復活◇ ラグビーの２０２０年度第５８回日本選手権兼第１８回トップリーグ・プレーオフ決勝は、２０２１年５月２３日、東京・秩父宮ラグビー場で争われ、パナソニック（トップリーグ・リーグ戦ホワイト１位）が、３１―２６の５点差で、サントリー（トップリーグ・リーグ戦レッド１位）に快勝し、日本選手権で２０１５年度第５３回以来、４回ぶり６回目の優勝とトップリーグで２０１５年度第１３回以来、４季ぶり５回目の優勝を飾った。 全国社会人大会から、大会、リーグ戦を通じ、４季ぶり６回目の優勝だった。 （連続回数などは、中止となった２０１９年度第５７回日本選手権と２０１９年度第１７回トップリーグを除く） 東京都が新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言下により、 ５，０００人以下の観客制限で行われたが、４，６６８人の観衆が集 まった。 トップリーグが、来年から新リーグとなるため、パナソニックは、トップリーグ最後の王者となった。 パナソニックは、前半、防御圧力でインタセプトから先制トライを奪い、ＳＯ松田の２ＰＧとＷＴＢ福岡のトライで２０―０とリードを広げ、１トライされたが、松田がＰＧを加え、２３―７と１６点差リードした。 後半は、サントリーが猛反撃し、開始早々にスピードトライを奪ったが、パナソニックはパワー押し込みでトライを重ね、終盤２トライしたサントリーを突き放した。 パナソニックは、大阪府が緊急事態宣言下のため花園ラグビー場で無観客により争われた準決勝で、トヨタ自動車（トップリーグ・リーグ戦レッド２位）に、前半を１点差リードされたものの、後半、逆転トライを奪うと３連続トライをたたみかけて、突き放し、２回ぶり１０回目の日本選手権決勝進出を果たしていた。 今季は、トップリーグ・リーグ戦ホワイトで、２位の神戸製鋼と引き分けただけで、６勝を記録し、プレーオフで４連勝して、１０勝１分けとした。 サントリーは、準決勝で、初めてベスト４に進出したクボタ（トップリーグ・リーグ戦レッド３位）に対し、１トライを奪い、ＳＯバレットの６ＰＧ、１ＤＧで、ノートライの３ＰＧだけに抑えて快勝し、４回連続 １４回目の日本選手権決勝進出で、２回ぶり９回目の日本選手権優勝とトップリーグで２季ぶり６回目の優勝を目指したが、２回連続６回目の準優勝とトップリーグで２季連続５回目の準優勝にとどまった。 パナソニックは、２０１９年第９回ワールドカップ（Ｗ杯）の日本代 表だったＰＲ稲垣、ＰＲヴァル、ＨＯ堀江、ＨＯ坂手、松田、福岡の ６人を擁し、今年の日本代表候補１１人がそろう。 しかも、今季、同Ｗ杯準優勝のイングランド代表ＬＯクルーズと同４位のウェールズ代表ＣＴＢパークスが加入して、戦力は充実していた。 トップリーグで創設以来、１７回連続ベスト８で、過去、優勝４回、準優勝６回の実績を誇るパナソニックだが、２０１８年度第１６回トップリーグは、不振にあえぎ、１２季ぶりにベスト４から転落して、６位に沈んだ。 それだけに、日本代表のＷ杯ベスト８躍進を引っ張ったメンバーたちの王座復帰への意気込みは高く、Ｗ杯直後のトップリーグが中止となって、その意欲は、さらに増していた。 同時に、大舞台の経験豊かで、マイペースの試合運びや好機を見逃さない状況判断、ピンチをしのぐ、すべにもたけていた。 この試合で引退を決め、順天大医学部で医師を目指す日本代表の得点源だった福岡は、存分のプレーに満足げにグラウンドを去った。 サントリーも、トップリーグで３季連続の決勝進出で、過去、優勝５回、準優勝４回の実績を誇るが、２０１８年度第５６回日本選手権兼第１６回トップリーグ優勝決定戦決勝で、神戸製鋼に完敗した悔しさが、王座復帰へのバネとなっていた。 第９回Ｗ杯の日本代表だったＨＯ北出、ＦＬツイ、ＳＨ流、ＣＴＢ中村亮の４人と今年の日本代表候補１２人がそろう。 そして、今季、同Ｗ杯３位のニュージーランド代表で大活躍したバレットが加わって、脂の乗った戦力で、攻撃的なカラーを一段と強めていた。 両チームの日本選手権決勝の対戦は、２０１７年度第５５回で、サントリーが１２―８で勝って以来、２回ぶり７回目で、過去、サントリーが４連勝し、４勝２敗と勝ち越していたが、パナソニックが雪辱した。 両チームのトップリーグなどの通算対戦成績は、パナソニックの４年ぶり（３戦ぶり）勝利で、２２勝２分け２５敗。 これまで４半世紀にわたり日本ラグビーを牽引してきた実力伯仲のライバル対決は、日本代表を支え、将来を展望するうえでも、重要な試合だった。 前半は、立ち上がりから、サントリーが縦突進から、パナソニックの防御を崩そうと狙ったが、パナソニックの防御は揺るぎない。 攻めあぐむサントリーは、展開パスつなぎで突破を試みるが、パナソニックの防御圧力で前へ出られず、５分にバレットがパスミスしたボールを、パナソニックＣＴＢライリーがインタセプトして独走し、先制トライを奪った。 パナソニックの攻撃的防御が、試合の流れを変えた。 ゴールした松田が、１４分にはＰＧを決めて、パナソニックが１０―０とリードした。 サントリーは、バレットの好キックから攻めるが、バレットは徹底マークにあって、抜いて出られない。 パナソニックは、福岡がキック・カウンター攻撃で好機を作り、ラックで圧力をかける。 １７分に、バレットが４０㍍近いＰＧを狙ったが、ポストに当たって入らず、サントリーは、攻撃の手をしばられた。 スクラムで圧力をかけるパナソニックは、２５分に、松田が４４㍍のロングＰＧを決め、１３―０とリードを広げた。 タックルからラックでターンオーバーすることが多くなったパナソニックは、３０分に、縦突進の連続から交代ＦＬ福井が突破突進し、展開すると松田が２人飛ばしの大きなパス。 受けた福岡が、ライン際を好走して、トライを加えた。 松田の好ゴールで、パナソニックは、ついに２０―０の大量リードを奪った。 パワー攻めも、パナソニックに押し返されて実らないサントリーだったが、ようやく３５分に、ＰＫタッチキックのラインアウトから押し込みを連続。 ボールはこぼれたが、素早くバレットが展開し、パスを受けた中村亮・主将がショートキックでパナソニック防御の頭を越し、自らボールを取ってトライした。 バレットがゴールして追うサントリーだが、３９分に松田が３つ目のＰＧを４１㍍から決め、２３―７と１６点差リードを保った。 後半は、立ち上がりからサントリーが反撃に出て、縦突進の連続から押し込み続け、バレットの好パスで交代ＣＴＢ梶村が突進し、さらにラックからバレットのオフロードパスでつなぎ、２分に、ＷＴＢ中靏がトライした。 サントリーらしいスピーディーな連続攻撃だった。 それでもパナソニックはラックを押し込みながら、ミスは多いものの、攻め続け、１５分に、ＰＫタッチキックのラインアウトから、押し込みを連続して、交代ヴァルがトライを奪った。 ゴールを狙った松田は、足を痛め、ミスしたが、パナソニックが ２８―１２と再び１６点差リードに戻し、勝利が見えてきた。 交代ＳＨ小山、ＳＯ山沢の若いＨＢコンビに代わったパナソニックは、２９分に山沢が４０㍍のＰＧをミスして、追加点が奪えない。 一気の逆転を狙うサントリーは、３０分に、パナソニックＦＢ野口がミスキックしたボールを奪い、つないで交代ＳＨ齋藤が独走トライし、バレットのゴールで追い上げた。 しかしパナソニックは、３３分に山沢がＰＧをしっかり決めて、３１―１９と１２点差リードを保った。 サントリーは、連続攻撃でパナソニックのゴール前に迫って、押し込みを連続し、大きく展開して、３９分にＦＢ尾崎がトライし、バレットのゴールで、５点差まで迫ったが、パナソニックが押し切った。 パナソニックが、堅く強い防御で、サントリーの攻撃のリズムを奪い、好機を生かして得点を重ね、先手必勝の大量リードを守り抜いた。 松田が好ゴールキックでリードを支え、要所でクルーズ、パークスが突破口を務め、坂手・主将がリードして、堀江、稲垣らベテランが揺るがぬ土台となり、野口や福井、山沢の若手が奮闘して、福岡が有終の好走を見せ、まさに全員の勝利だった。 一気の攻撃力を誇ったサントリーだが、ＦＷが押され気味で、バレットが自在に動く機会が少なく、ペースをつかみ切れなかったが、スピーディーで正確なパス回しで、トライ獲得数では上回った 攻防にスキのない両チームのスピードに乗ったパワー対決は、日本ラグビーのレベル向上を実感させた。 コロナ禍で、トップリーグは、リーグ戦で１試合、プレーオフで準々決勝１試合が中止となり、無観客試合や観客制限に追い込まれたが、充実した高レベルの試合で、異例のシーズンの幕を閉じた。 ２０２１年５月２３日記 |
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