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◇鋭い防御で締まった試合を◇
年末の第１００回全国高校大会の都道府県予選が、トップを切って、９月２日に宮城県でスタートした。
関東大学は、１０月４日に対抗戦とリーグ戦が同時開幕し、１２月６日の早明戦までの日程が発表された。
トップウエストのリーグ戦も、１０月２４日に開始の予定。
ようやく２０２０年度日本ラグビーの公式戦が始まった。
とはいえ、東京などで新型コロナウイルス感染症の感染拡大が収束する気配を見せず、関係者や競技者の家族だけが観戦できる無観客試合がほとんどで、関東大学では、半数以上が無観客試合で、秩父宮ラグビー場や熊谷ラグビー場などでの有料試合も大幅な観客制限で行われる予定だから、ファンには寂しい再出発だ。
関西大学Ａリーグ戦は、天理大の集団感染などで中止となり、悩みが多い。
感染拡大の勢いに大きな変化がないものの、政府はプロ野球やＪリーグの観客制限を、１万人以上の収容施設で５０％までと緩和したが、不安の消えない観客拡大には違いない。
政府は、出入国制限も、東京五輪関連などでトップリーグを含めた外国人競技者の入国を認めるように緩和したが、競技者や指導者の出入国は、むずかしい問題を抱えている。
このため、１１月に計画されていた欧州での新しい国際大会への日本代表の参加は断念され、今年の日本代表の国際試合はなくなった。
同大会は、欧州６カ国対抗の代表に加えフィジー代表と、日本代表に代わってジョージア代表が出場し、１１月１３日に開幕を予定している。
欧州や南半球での感染の再拡大が深刻になり、世界的な感染拡大はさらに進んだ。
南半球４強国対抗（ラグビー・チャンピオンシップ）は１１月７日から１２月１２日まで、豪州で集中して争われる予定だが、世界一の南アフリカ代表が参加できるかは決まっていない。
ラグビーの国際交流は困難な状態にある。
それでも、国内公式戦が始まったことで、日本ラグビー再生に弾みがつくだろう。
関東大学対抗戦は、昨季、明大が全勝で４年ぶり１７回目の優勝を飾ったが、直後の第５６回全国大学選手権では早大が、明大を破って１１年ぶり１６回目の王座に就き、早明時代の復活を思わせた。
一方で大学ラグビーをリードしてきた帝京大が対抗戦で３位に後退し、８連覇で記録はストップして、大学選手権では１３年ぶりの初戦敗退となった。
大学勢力図の大きな変化を感じさせる新シーズンインだが、春季リーグや菅平高原での夏合宿の中止などで、ぶっつけ本番の対決となるから、始まってみなければ、王座の行方はわからない。
昨季は不振だった慶大の巻き返しも注目される。
大学全体として、昨季は、確実な防御の徹底が大きな課題として残った。
とりわけ個人防御力の甘さが目立って、将来の日本代表の押し上げに不安を感じさせた。
ウイルス感染拡大対策で、組織的な攻防の鍛錬不足は否めないが、個人能力の向上に多くを費やした成果が、攻撃の多彩さ以上に、防御の鋭さで発揮されることが期待される。
それが引き締まった試合を生み、新たな発展を実感させるだろう。
有力校の主力は、昨季を経験しており、力を蓄えているはずだ。
個人の状況判断が試合で重きをなすことが多いだろうから、個人能力の成長度を示す好機である。
組織的な成熟に多くを期待できないとしても、臨機応変な個人の力は、世界トップとの距離を縮める好材料になる。
昨年のワールドカップで上昇に転じた国民人気を定着させるには、将来性を感じさせる新しい力の伸長が重要な意味を持つ。
観客制限など厳しい条件下だが、試合内容の豊かさがラグビーの魅力を再発見させるだろう。
１０月には高校の公式戦が全国的に広がり、困難な環境でも、辛抱強く努力してきた高校ラガーメンが、はつらつとしたプレーを見せることだろう。
ウイルス感染拡大の不安が消えない中でも、日本ラグビーの生命力は不変のはずである。
２０２０年９月１３日記
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