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◇再開は焦らず計画的に◇
新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が全国に及び、５月末まで延長されたが、地域的には感染拡大がピークを越えたとして、規制緩和に動いている。
感染者の少ない地域によっては、外出自粛や学校の休校要請などが解除され、制限付きだが部分的に日常が戻り始めた。
東京などの特定警戒都道府県では緩和の見通しは立っていないとはいえ、全国的には、スポーツ活動再開の環境が生まれてきた。
しかし屋外の運動でも、密集、密接を避けて、人と人が距離を置くことが条件だから、本格的なスポーツ活動は、しばらくは無理のようだ。
しかも、ラグビーは、人と人との濃厚接触による密集が特徴的なスポーツだから一層、再開はむずかしい。
トップリーグのチームなど社会人の多くのチームが特定警戒地域に属しており、チームとしての活動再開には、さらに時間が必要だろう。
高校の部活動が部分的に再開されても、部員の個人体力や能力の現状確認から始めねばなるまい。
広域移動の制限は続きそうで、北海道や長野県菅平などでの恒例の夏合宿も、むずかしいかもしれない。
だからこそ、どんな場合に、どんな方法で、どう実施したら集団感染を避けて、安全な鍛錬やチームつくりが可能なのかに関し、医学的な専門知識に基づいたアドバイスが不可欠だ。
ラグビーの特殊性を熟考して、日本協会が基本指針を示すことが急務である。
各層の各チームは、活動制限の長期化を覚悟して、焦らず、計画的に、本格的な再開を目指すしかない。
さまざまな方法で、チーム構成員のコミュニケーションを十分に取りながら計画を立てる必要があるだろう。
トップリーグなど社会人チームは、企業社員と企業とのプロ契約や企業支援でチームが存続しているのが日本的特徴でもある。
長引く経済活動の停滞は、大企業の経営にも大きなマイナス要因となり、チーム支援の厳しい対応も予想される。
パナソニックをトップリーグ３連覇に導いた元豪州代表ＳＯのベリック・バーンズが、リコーを退団して現役引退を表明した。
神戸製鋼の日本一をけん引した元ニュージーランド代表ＳＯのダン・カーターも去った。
日本ラグビーの飛躍のバネとなった有力外国出身者が姿を消していく。
今後は、日本一争いに多くの有力外国出身者が参加できる条件は厳しくなるだろう。
各層の競技者たちの競技生活環境に関しても、日本協会の根本的な対策が欠かせない。
プロ野球やサッカーＪリーグなどプロ競技は再開の見通しが立たない中で、興行的な難問を抱えている。
芸術分野だけでなく、スポーツ分野でも収入やスポンサー支援の減退が深刻な影響を与え始めている。
将来が見通せない政府の判断に頼るのではなく、スポーツ界が自主的に将来を見据えることが必要になっている。
ラグビー界も自主性が問われる。
ファンと一体化した競技会やチーム運営のあり方を再検討すべきだ。
安易にスポンサーに期待するばかりでは、厳しい社会状況に対応できない。
新しいリーグの成功には、社会的難題が待ち構えている。
欧米でも、規制緩和に動き始めてはいるが、不安が消えてはいない。
ボーモント会長が再選された世界ラグビー機構（ＷＲ）は、将来の新国際大会創設に意欲的なようだが、各国の再開方策を示し切れていない。
日本協会は、独自に競技会再開への道筋を探し出すしかない。
ウイルス感染が収束に向かったとしても、２０１９年度の状態に一気に復帰すると考えるのは間違いだ。
政府や経済界の希望的観測に振り回されては、足元を見失う。
経済的に後退した新しい社会状況の中で、日本ラグビーの進むべき方向を模索しなくては、発展は望むべくもない。
カギは、ラグビーというスポーツが、どう心豊かな生活に欠かせないかを、ラガーメンの経験と知恵で多様に示す工夫にある。
２０２０年５月１２日記
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