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◇日本一決まらずシーズン閉幕◇
新型コロナウイルス感染症の感染拡大対策で第１７回トップリーグの中止に続き、ついに第５７回日本選手権が中止となり、日本一が決まらないまま、２０１９年度シーズンは、終盤の空白の中で閉幕した。
第６節で中止と決まったトップリーグは、パナソニックと神戸製鋼が６戦全勝で走っていたが、注目の対決は幻となった。
高校では、２０２０年度の新シーズンも第２１回全国選抜大会の中止に続いて、第７回全国７人制大会が中止になり、秋に向けての全国大会は中止が相次いだ。
大学の関東、関西の春季リーグやトーナメントも中止された。
チーム活動や練習が制限され、試合も練習もない完全オフである。
ウイルス感染の世界的な拡大でスーパーラグビーは中断され、英国などの国内試合も中止された。
世界ラグビーが長いオフに入っている。
イングランド代表の日本遠征は、秋に延期されるようだ。
生命と安全第一だから、やむを得ないとはいえ、異例ずくめのシーズン閉幕で、先の見通しは立たない。
東京五輪・パラリンピックが１年後に延期され、すべてのスポーツ競技会が延期、中止に追い込まれた。
感染拡大に対し、医療従事者の命がけの奮闘が続くが、政府の混乱は治まらない。
外出自粛は２カ月に及び、ストレスが社会を覆う。
陽光がまぶしい、浮き立つような季節の中で、戦時中や災害被災と同様に、国民生活には我慢が強いられている。
しかし、苦境の中でもラグビーの復興を信じて歴史を刻んできた豊かな経験がある。
戦後、いち早く自ら動き出して秩父宮ラグビー場の建設を果たした競技者たちの強い意志が、日本ラグビーの伝統を育んだ。
競技者やファンには、復活へのエネルギーを蓄える試練の季節なのだろう。
積極的に生かす工夫の時間が与えられている。
２０１９年度シーズンは、ワールドカップ開催でブームを起こし、飛躍の途上にありながら、とん挫を余儀なくされた歴史的なシーズンだった。
それを深くとらえ直す好機である。
ラグビーの真の楽しさ、面白さは、どこにあるのか、何を見忘れて、何が不足していたのかを、じっくり考えたり、屋外で一人走り、体を鍛え、準備をする期間でもある。
２０２０年度シーズンは、競技者や指導者、関係者が、個人で、これまでの経験を整理し、ラグビーに対する考え方や親しみ方を深め、これからのあり方や目標を定めることからスタートしたはずだ。
トップチームはじめ各層で、新チームの本格的なチームつくりは早くても夏すぎになりそうだが、ラグビーに取り組む意志を確認して臨むことで、自主的な姿勢が強まるだろう。
チームつくりが短期間でも、指導や鍛錬のあり方の改善で、競技者の自主的な意欲が、体力や技術の成長を後押しし、成果が期待できる。
チーム運営や支援者との関係も、これまで以上に競技第一へ変わる可能性が高い。
自主、自律、協同の重要性が再確認され、競り合いの質が高まるだろう。
だからこそ日本協会は、日本一決定システムを含めて、トップリーグはじめ各層の競技会スタイルの改革に動き出す必要がある。
トップリーグが禁止薬物使用の法令順守教育を理由として延期を決定したことに対し、選手会が不満を示したように、日本協会の運営には競技者の意思が十分に反映されてはいなかった。
競技者と指導者、関係者が一体となった改革でなければ、新しい日本ラグビーのあり方は創出できない。
一体となれる運営方法が模索されねばならないだろう。
外国出身者の参加が拡大し、ワールドカップ開催が大きなバネとなって、ファンの国際連帯意識が高まった。
競技者や指導者、関係者は、世界の中の日本ラグビーを意識し続ける必要がある。
長い空白は、世界ベスト８に到達した日本ラグビーが、さらに飛躍する再出発の助走期間なのだ。
２０２０年４月１４日記
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