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◇大学日本一争いの新たな課題◇
第５６回全国大学選手権が始まった。
日本代表が飛躍したワールドカップ（Ｗ杯）後、初の日本一争いである。
次代の日本代表を担う大学生が、Ｗ杯をどうとらえたか注目される。
王座争いの中心にある関東対抗戦で明大、同リーグ戦で東海大、関西リーグ戦で天理大が、いずれも全勝優勝を飾って選手権に臨み、激しい闘いになりそうだ。
関東対抗戦と同リーグ戦は、史上初めて、夏合宿の本拠地である長野県菅平高原で開幕した。
関西リーグを含め、Ｗ杯開催で中断して、例年どおりの王座争いと、初めてずくめのチーム作りで、波乱もあった。
それでも、関東対抗戦では、明大が、２１年ぶりに全勝王座に就いた。
第５５回選手権で２２年ぶりに大学日本一になった勢いに乗り、３回目の２連覇を狙い、完全復活を目指す。
明大は、伝統の強力スクラムの威力を高め、早大、帝京大のライバルを圧倒した。
素早く前に詰める着実な防御を意識的に追求し、前へ前へと攻撃的姿勢を貫き、リズムをつかむと確実にトライを重ねた。
攻防にミスは残るが、スクラムと攻撃的防御でペースに持ち込み、日本代表の闘いが反映している。
ＦＷパワーに加えてバックスの展開力も高い。
ＬＯ箸本龍雅（３年）の突進力とＳＯ山沢京平（３年）の意欲的なリードがバランスの取れた戦力を前へ動かす。
前への意識が攻防に徹底され、復活を納得させた。
パワー対決を意識しすぎて明大に完敗した早大だが、ＳＨ齋藤直人（４年）とＳＯ岸岡智樹（同）を軸に、伝統の展開力に富んで、一気の攻撃力がある。
受け身になるともろいが、粘りの防御は強い。
第５５回で１０年ぶりに王座から転落した帝京大は、関東対抗戦でも早大、明大、慶大に３連敗して、９年ぶりに王座から離れた。
着実だった防御に甘さが消えず、ミスが多くなり、組織力に、ほころびが出て、修正し切れず、初戦敗退に終わった。
関東リーグ戦では、東海大が４年ぶりに全勝を達成した。
流経大に前半で５―２１と大量リードされながら、後半はスクラムとラインアウトからのモール攻勢で逆転した。
パワーに富むが、ミスの多い粗さが残った。
関西リーグ戦は、天理大が４年連続の全勝王者で、危なげない圧勝を続けた。
第５５回準優勝の悔しさをぶつけて、初の日本一へ意気込む。
力不足の慶大が２２年ぶりに選手権から姿を消した。
同志社大は３年ぶりに復帰したが、初戦で敗れた。
全体として、大学でも、攻撃的防御の重要性が意識されてきたことがＷ杯効果と思われるが、組織を重視する反面、個人能力を高めることが不足していた。
このため受け身になると、脇が甘くなる。
日本代表が、個人能力を鍛え上げながら、結束した攻撃的防御を磨いてきたことを忘れてはなるまい。
また、スクラムやラインアウトからのモールの結束した押し込みに力点が置かれているものの、パワー優位を多彩な攻撃に結びつける工夫が少ないのも気がかりだ。
明大を軸にした王座争いでは、パワー対決が多くなりそうだが、そこから一気の展開連続攻撃を仕掛ける大胆さが求められる。
スピーディーな攻防が、日本ラグビーの到達したレベル持続の期待を高めるだろう。
年末からの第９９回全国高校大会は、春の全国選抜大会で３連覇し、夏の７人制大会で初優勝した前回準優勝の桐蔭学園（神奈川）を軸にした王座争いと見られる。
常連の大分舞鶴（大分）を破って大分東明が初出場するなど、変化も生まれている。
Ｗ杯でベスト８に飛躍した日本代表が、そのレベルを維持し、さらに上を目指すには、個人能力が飛躍的に高まることが大きな課題として突きつけられた。
そのためには大学や高校の段階に応じた体力や技術、スピードとパワー、状況判断などで高いレベルの成長と課題が明確になる試合内容が重要な意味を持つ。
それが、将来の日本代表を押し上げることにつながるだろう。
２０１９年１２月１５日記
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