|
◇ベスト４とは大差の日本代表◇
初めてＷ杯決勝トーナメントに進出した日本代表だったが、２回の優勝経験を持ち、今回も優勝を狙う南アフリカ代表のパワーに圧倒された。
９月６日の前哨戦よりは、南アフリカ代表に肉迫したが、レベルの違いは明らかだった。
前半こそ、互角の争いに持ち込めたが、それで痛み、消耗して、後半は、南アフリカ代表ペースで、突き放された。
前半立ち上がりから、ＳＯ田村がキックパスを使ったり、展開連続攻撃を仕掛けたり、意欲的に攻めた日本代表だった、強力に抑え込む南アフリカ代表の防御にあって、突破しきれない。
スクラムで圧力をかけられ、先制トライされたが、９分に南アフリカ代表ＦＷがシンビンとなって、数的優位に立ったものの、ＷＴＢ福岡が突破しながら、ラックで抑え込まれて、一次リーグのような連続攻撃に移れなかった。
ここに、ベスト４クラスとの力の差が現れていた。
南アフリカ代表は、前哨戦では、キックを多用し、ボールの落下点を支配して日本代表を圧倒したが、Ｗ杯で成長した日本代表に対しては、思いどおりにはいかなかった。
それでも、日本代表の懸命な攻撃や必死の防御に圧力をかけながら、南アフリカ代表ペースに巻き込む形で、日本代表に消耗を強いた。
南アフリカ代表は、前回も、相手を消耗させるパワー攻防で抑え込みながら、じっくり勝機を待って、準々決勝でウェールズ代表に逆転勝ちしていた。
密集で押し込まれると反則が多くなる。
南アフリカ代表は、後半、日本代表を密集で押し込みながら、反則を引き出してＰＧを決め、点差を広げていった。
相手を消耗させながら、勝利を確実にしていく、これもベスト４クラスの試合運びである。
日本代表は、一次リーグの対サモア代表戦で、これを目指していたようだが、サモア代表を消耗させるほどの力を持っていなかったから、苦戦した。
相手の動きを止めるだけでなく、ボールを奪って一気に攻撃に移る攻撃的防御の速さは、ベスト４の代表は、いずれも身につけていた。
意識はあっても、強力なパワーを持つ代表には実行し切れないのが、日本代表の実力である。
しっかりした、押しのあるスクラムやラックを徹底できないと、ボールを確実に保持して展開できないから、オフロードパスは危険になるし、パスミスはカウンター攻撃の餌食になり、カバー防御が遅れて、つながれてしまう。
ラインアウトで、ボールを確実にキャッチされると、モールの押し込みや速い展開、割って出るパワープレーを自在に選択される。
ボール奪取、確保のすべてで、ベスト４とは、大きな力の差があった日本代表だった。
一次リーグで、アイルランド代表やスコットランド代表に勝てたのは、攻撃的防御のスピードをあげて、粘り強く徹底し、意表をつく速い展開を仕掛けて、相手の攻防に迷いを生み出したからで、力で上回っていたわけではない。
ベスト８常連組は、巻き返す力を備えている。
日本代表が、ベスト８の力を維持するのは、難題である。
組織プレーに加えて、個人能力のたくましさが不可欠で、激しい突進や厳しいタックルを受けても、突破できる力や逆襲できる力を身につけないとむずかしい。
体力、走力など個人体力の向上と厳しい条件下でも発揮できる確
実な技術、判断力など個人能力の飛躍とスピードアップした組織力の醸成が必要で、退場者を出しても１点差負けだったフランス代表の奮闘が参考になるだろう。
ボール奪取、確保の能力の飛躍がなければ、攻撃のバリエーションは深まらない。
攻撃的防御からのスピーディーな組織的な攻撃も必要で、ニュージーランド代表のトップスピードで走りながらの多彩な組織的攻撃力が参考になりそうだ。
よりスピーディーな攻防の個人能力の向上が土台となって、よりスピーディーな組織的攻防の方策を研さんすることが重要になる。
高校時代までに、パワフルで、スピーディーな個人能力と基本プレーの徹底習熟が必要で、大学時代に、それを組織的に高める試合展開を試行錯誤し、トップリーグの実戦で、厳しく鍛錬する流れを、どう構築するか。
高校大会や大学リーグ、そしてトップリーグの改革も課題だろう。
２０１９年１０月２３日記
|
