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◇鋭いキック対応で再び奇跡を◇
アジアで初の第９回ワールドカップ（Ｗ杯）日本大会が開幕した。
ベスト８進出を目指す日本代表は開幕戦で、前回に続いて再び奇跡を起こすスタートを切った。
Ｗ杯３連覇を狙うニュージーランド代表や世界ラグビー機構の世界ランクで１位に躍り出たアイルランド代表なども王座へ向けて厳しい争いを続けた。
開幕直前の前哨戦で前回の奇跡の再現を目指した日本代表だが、南アフリカ代表は重厚な壁となって、世界トップの実力を示した。
日本代表には大きな教訓となった完敗だった。
南アフリカ代表は、第６回Ｗ杯で２度目の優勝を飾ったパワフルな攻撃と鉄壁の防御をよみがえらせていた。
スクラムで重い圧力をかけ、大きく展開して先制トライすると、ハイパントやキックから落下点の密集で日本代表を押し込み、トライラッシュ。
不用意な展開勝負でリスクを負わない堅実な攻めを徹底しながら、確実で粘り強い防御でターンオーバーからパワーで圧倒した。
日本代表のお手本となる攻撃的防御だった。
キック対応に甘さを残す日本代表の弱点を突き、パワー防御で展開の足を奪った。
スクラムでよく耐えて、攻撃的防御を怠らなかった日本代表とはいえ、空中戦からの攻めには防御が出遅れ、逆襲の芽を摘み取られた。
押し込まれて、つなぎミスが出て、トライを重ねられた。
Ｗ杯の王座を争う代表は共通して、マイペースに持ち込むのがうまい。
前回の奇跡は、日本代表が、南アフリカ代表のペースを厳しい防御で崩して、食らいつきながら接戦に持ち込んだことで生まれた。
それを南アフリカ代表は教訓としていたのだろう。
Ｗ杯一次リーグＡ組ではアイルランド代表、スコットランド代表ともに、日本代表の特徴をとらえてくるだろう。
前回と違って、しっかり研究されていることを覚悟しなければなるまい。
日本代表には、欧州強豪の多彩なキック策に鋭く対応する力が不可欠だ。
自在なキックを阻止する先手を取った攻防が必要になる。
タックル後の結束の速さと早い球出しで、一気にミスなく展開すれば、相手を受け身に立たせることができる。
逆に、受け身になるとミスや反則が多くなり、自滅パターンに陥る。
スクラムやラインアウトからのモールの攻防も、さらなるスピードアップを図らねばなるまい。
スピードで圧力をかけることがカギを握るだろう。
アイルランド代表は前哨戦で、ウェールズ代表に２連勝し、ＳＯジョナサン・セクストンがケガから復帰して安定感を増し、スコットランド代表はＳＨグレイグ・レイドローとＳＯフィン・ラッセルのＨＢコンビがしぶとい強さを見せていた。
ともに強力ＦＷが支え、堅実だが、キックを巧みに使っていた。
サモア代表は、日本をよく知るＳＯトゥシ・ピシやＷＴＢティム・ナナイウイリアムズが復帰して、不気味な存在である。
他のＷ杯一次リーグを展望すると、Ｂ組ではニュージーランド代表と南アフリカ代表が決勝トーナメント進出確実で、Ｃ組はイングランド代表とアルゼンチン代表、フランス代表の争いが厳しく、Ｄ組は、ウェールズ代表、豪州代表にフィジー代表が挑む。
Ａ組、Ｂ組ともに初戦で１位候補が激突し、Ｃ組もアルゼンチン代表とフランス代表が争い、Ｄ組は豪州代表とフィジー代表が対戦。
初戦から目の離せない激戦だった。
次代の日本代表を担う大学の争いも始まった。
関東大学は、初めて夏合宿の本拠地である長野県の菅平高原で開幕し、ピクニック気分の多くの観衆を集めた。
開幕戦は、まだ仕上がりが不十分な大学が多かったが、関東対抗戦では、２年連続の大学日本一を狙う明大がパワーとスピード豊かに走り出し、帝京大、早大も３連勝。
慶大は７年ぶりに筑波大に敗れた。
リーグ戦は、東海大と日大が結束よく３連勝。
大東大が７年ぶりに日大と拓大に惜敗した。
関西リーグは天理大と同志社大が３連勝した。
知恵と工夫が激突するＷ杯の争いに、世界ラグビーの発展方向が見えてくるだろう。
２０１９年９月１７日記
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