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◇攻撃的防御が多彩な攻撃に生きた◇
日本代表が、ワールドカップ（Ｗ杯）前哨戦のパシフィック・ネーションズカップで３戦全勝の優勝を飾り、世界ラグビー機構（ＷＲ）世界ランキングで９位に上がった。
３戦ともに４トライ以上を獲得し、総得点１０９、総失点４８の快勝街道だった。
とりわけ、それまで同ランキング９位だったフィジー代表を８年ぶりに破ったことの意味は大きい。
フィジー代表の得意とするパワフルでスピーディーな強力突進からの素早いパス回しを、ほぼ抑え切った攻撃的防御は、Ｗ杯本番での強豪欧州勢との互角の争いの基盤を作った。
しかも攻めあぐむフィジー代表のミスを見逃さず、一気に攻めてスキのない試合運びにつながった。
相手の攻撃の手をしばれば、スクラムの圧力を効かせて、思いどおりの攻撃ができる。
その自信は、トンガ代表のラインアウトミスを引き出し、ラインアウト優位は、キック策を有効にして余裕のトライラッシュを生んだ。
米国代表には、スピード展開はもちろん、パワー対決でも優位に立ち、やや緊張感を欠く場面はあったが、格の違いを示した。
変幻なＦＢ松島幸太郎をＷＴＢに起用して、スピード展開攻撃によるトライ獲得が増加したのは間違いない。
福岡堅樹と決定力の高い両翼はたのもしい。
ＦＬリーチ・マイケル主将の復活でオフロードパスのつなぎでトライを生む力もつけた。
ＳＯ田村優のキックに余裕が出てきて、相手を読んで、正確だった。
攻撃的防御で単調な攻撃策に追い込み、セットプレーで互角以上の安定感を持てば攻撃の幅が広がり、どこからでも攻めてくる油断のならないチームの印象を強くする。
勝って当然の相手にマイペースで勝ち切るのが世界トップの条件だ。
とはいえ、欲を出して、奇をてらった攻撃策を狙うのは危うさをともなう。
あくまでも、攻撃的防御の徹底とセットプレーの強さが、多彩な攻撃を支えたことを忘れてはなるまい。
この３戦で、ラインアウトからのモールの押し込みから３トライを奪われ、スクラムから１トライされたことは留意すべきだろう。
欧州勢の強さを想定すれば弱みを見せたことになる。
しかもスクラムやラックで反則が多かった。
結束のわずかな遅れがピンチを招き、ターンオーバーからの逆襲が不可能になり、詰めの甘さを露呈した。
バックスリー防御を中心にしたキック対応の不安定さは、消えてはいない。
試合の組み立ては、世界トップに肉迫できる力に成長したが、それを確実に遂行する力は、まだ発展途上ということだろう。
南半球４強国によるザ・ラグビー・チャンピオンシップでは、南アフリカ代表が初優勝し、ニュージーランド代表が３位に転落した。
世界は動いている。
ニュージーランド代表は、不動のＳＯボーデン・バレットをＦＢに起用し、ＳＯリッチー・モウンガを生かす新布陣を試したが、南アフリカ代表と引き分け、豪州代表には、ＬＯスコット・バレットが退場処分となって後半を１４人で闘い、完敗した。
堅実で展開力を高めた南アフリカ代表が、ＳＯハンドレ・ポラードの活躍で頂点に立ち、豪州代表には再上昇のきっかけになった。
アルゼンチン代表も迫っている。
それでも、ニュージーランド代表が王座争いの中心にいるのは変わりないが、波乱含みのＷ杯が予想される。
欧州のＷ杯前哨戦では、イングランド代表が、ウェールズ代表のテスト連勝を「１４」で止め、アイルランド代表が、若手の戦力チェックを進めながら、イタリア代表を突き放した。
トップリーグのカップ戦は、神戸製鋼が決勝でクボタに圧勝して王座に就いた。
事実上の決勝と見られた準決勝のサントリー戦で、スクラムや強力な縦突進の連続を受けて苦戦しながらも、外国出身者を軸に豊かな展開力のスピードで接戦を勝ち抜き、トップリーグ２連覇に弾みをつけた。
Ｗ杯日本代表が決まり、南アフリカ代表への挑戦で、飛躍が期待される。
２０１９年８月１４日記
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