大野晃のラグビー通信  


 

            号外222 2018年3月20日

 

                              

※月刊誌ラグビーマガジンに連載中のコラム「楕円球界定点観測」から、2018年5月号(2018年3月25日発売)に掲載する原稿を転載致します。                       大野 晃 


 

      

◇攻撃的防御の徹底で巻き返しを◇

  

 

サンウルブズが、なかなか勝てない。

 

3戦を終わって、豪州や南アフリカの強豪チームと互角に近い闘いはするものの、勝機をつかめない。

 

強いファーストタックルからの攻撃的防御が徹底できないからだ。

 

防御のスキは攻撃ミスにつながりやすく、試合の主導権を奪えない。

 

外国出身者を多数起用したサンウルブズだが、南半球勢のパワー、スピードに押されっ放しである。

 

第1戦の対ブランビーズ戦は前半をリードしながら、後半3トライを浴びて逆転負けした。

 

前半立ち上がりから、前へ詰める防御を徹底して、縦突進の連続からの展開攻撃を阻止し、結束よく3トライを奪った。

 

スクラムで優位に立ち、好リズムで攻め続けたが、ミスから2トライを奪われ、試合の流れが変わった。

 

後半は、スピーディーなパワー攻撃を連続され、受け身に立たされて防御が空回りし、圧倒された。

 

第2戦の対レベルズ戦は、ラインアウトを支配され、スクラムも押し込まれて、攻め手をしばられ、前半は防御の結束の遅れなどでバックス3人が負傷交代し、ミスを突いて同点に追いついたものの、後半は連携の悪さも手伝って、3連続トライされて突き放された。

 

セットプレーの劣勢から受け身の防御が多くなり負傷者続出につながった。

 

豪州のチームはパワーあふれる縦突進の単調な攻撃が中心だが、スピーディーでつなぎが速い。

 

相手防御が受け身になれば、サインプレーを駆使した突破も鋭い。

 

第2戦でサンウルブズは痛感させられただろう。

 

南アフリカに乗り込んでの第3戦対シャークス戦は、前半から連続攻撃を受けて3トライされ、堅い防御を崩せないまま、計7トライを奪われて圧倒された。

 

苦戦の中でも、HO堀江、SH田中、SO立川、FB松島の動きは光った。

 

ワールドカップ体験で、世界トップとの闘い方をしっかり身につけているようだ。

 

3戦に共通しているのは、セットプレーで劣勢になり、受け身に立たされて防御が多くなったうえ、押し込まれながら止めるだけの防御になって崩され、連続トライを奪われる形である。

 

ラインアウトの苦戦は予想されたが、スクラムで安定感を欠いたのは響いた。

 

主導権を握って攻め続けるのは第1戦の前半で終わってしまったようだ。

 

ほぼ勝敗のすう勢が決まった後で、良い形の攻撃ができたにすぎない。

 

善戦健闘パターンにとどまっている。

 

あらためて基本的課題の克服がむずかしいことを示した。

 

セットプレーの確実な強化と攻撃的防御の粘り強い貫徹である。

 

強力外国勢との1対1のパワー対決では劣勢なのは明らかだから、防御では、ファーストタックルを支える結束の速さを鍛え上げるしかあるまい。

 

そして堅い防御からの多彩な攻撃力を身につけねばならない。

 

世界トップは、同じことを徹底して鍛えている。

 

欧州6カ国対抗戦でアイルランドが3年ぶりに王座に復帰した。

 

着実で強力なFW、バックス一体の連続攻撃で勝ちを重ねた。

 

対スコットランド戦で、その力を誇示し、圧倒して優勝を決めた。

 

防御も強力でスキがない。

 

新戦力が伸びている。

 

スコットランドはイングランドから10年ぶりの勝利をあげた。

 

SHのG・レイドロー、SOラッセルの積極リードでバックスの決定力が高まった。

 

しぶとさは変わりない。

 

イングランドは攻撃に勢いがなく苦戦している。

 

それだけ欧州トップの防御力が高まっているということだろう。

 

日本代表のライバルは確実に力をつけている。

 

ワールドカップでベスト8進出の課題はさらに重い。

 

サンウルブズは、日本代表の強化のためにあるのだから、日本出身の若手の飛躍が何よりも重要で、厳しい闘いの経験を生かすことが期待されている。

 

勝ち負けより将来性を重視した起用も求められる。

 

 2018年3月13日記


   

      ラグビー通信目次に戻る  /  次へ


 
 

      説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: C:\Users\Akira Ohno\Documents\FSJHP\rugbytu\ft_mlink_btn_01.gifご意見・ご感想はこちらまで