|
◇攻撃的防御から一気の逆襲を◇
２０１９年第９回ワールドカップ（Ｗ杯）一次リーグの日本の対戦相手が決まった。
アイルランド、スコットランド、欧州予選１位（ルーマニアが有力）、敗者復活の欧州・オセアニアプレーオフ勝者（プレーオフへは、欧州はロシアかスペインが有力で、オセアニアはトンガとサモアの第２代表争いが注目されるが、実績などから、オセアニア勢が欧州勢を上回りそうだ）である。
決勝トーナメント進出のベスト８には一次リーグ３勝以上が必要になる。
世界ラグビー機構（ＷＲ）の公式記録で勝ったことがないアイルランドとスコットランドのどちらかを破ることが必須の条件だ。
日本は、アイルランドとは過去７戦して全敗。
宿沢ジャパンが第２回Ｗ杯一次リーグで１６―３２と善戦してスピード・ジャパンとダブリンのファンを驚かせたのが印象深い。
スコットランドとは前回から２回連続の対戦だ。
ＷＲの公式記録では過去７戦全敗の日本だが、それ以前の１９８９年に宿沢ジャパンが秩父宮で２８―２４の４点差初勝利し、日本の記録では１勝１０敗である。
ともに３０年近くも前に、Ｗ杯初勝利を飾った宿沢ジャパンが接戦を演じている。
前回のＷ杯で大躍進した日本だが、南アフリカに奇跡の勝利してから中３日の厳しい対戦でスコットランドには完敗している。
ルーマニアには４勝１敗と分がいい。
６月に来日するルーマニア代表とアイルランド代表との争いが、かっこうのＷ杯前哨戦となる。
アイルランドは、昨年、ニュージーランドに、１９０５年の初対戦以来、１１１年、２９戦目にして初勝利し、ニュージーランドのテストマッチ連勝を１８でストップさせた。
今年の欧州６カ国対抗ではイングランドのテストマッチ連勝を１８で止め、世界ランク４位に躍進した。
しかし、来日と同時期にニュージーランド遠征するブリティッシュ・アイリッシュ・ライオンズ（英国とアイルランドの４協会代表）にＦＷ第１列の３人、ＬＯ１人、ＦＬ３人、ＨＢコンビ、ＣＴＢ２人の主力１１人が選出されて来日しないから、若手を含めた１軍半的な構成になるだろう。
それだけに、豪州遠征のブリティッシュ・アイリッシュ・ライオンズに主力を送っていたスコットランドに初勝利した時同様、日本代表の歴史的初勝利が大いに期待できる。
勝利のカギは、攻撃的防御からの一気の逆襲を意識的に徹底できるかだろう。
確実なタックルで相手を抑え込むだけでは、攻撃的防御とは言えない。
抑え込んで、素早い結束で押し込み、ボールを奪って一気の展開攻撃でゴールを割る意欲が不可欠である。
大型チームに対する日本の強みであり、飛躍の原動力だった。
若手中心で臨んだ日本代表はアジア・チャンピオンシップで３連覇を達成したが、攻撃的防御から一気の逆襲に威力を見せたのは対韓国第２戦だけだった。
対韓国第１戦は防御に甘さを見せて苦戦し、対香港の２戦は、相手を抑え込む防御が徹底されたとはいえ、タックル後のボール奪取への結束が遅れ、個人パワーの対決に巻き込まれて一気の攻撃に移れず、リズミカルなスピード展開ができなかった。
個人パワー対決は英国系の大型な香港には不利だった。
欧州のトップクラスは共通して強力なセットプレーから個人パワーを生かした多彩な攻撃を繰り出し、堅い防御を誇る。
スクラムで圧力をかけ、縦突進で押し込み、一気の展開を狙う。
それでも、日本代表がスクラムで押し負けず、縦突進を攻撃的防御で押し込み、一気の逆襲展開に成功すれば、勝機は十分にある。
ラインアウトからのモールラッシュや逆サイドからのＷＴＢの一気の突破展開も、欧州勢は得意とする。
サンウルブズの試合ぶりを含めて、ラインアウトからの攻防の工夫が日本に不足しているのが気がかりだ。
キック対応のバックスリー防御の甘さは、まだ克服されていない。
重点的には、スクラムなどセットプレーのさらなる強化が必要だろう。
２０１７年５月１４日記
|
