ラグビー通信第５４号

　　　大野晃のラグビー通信

　　　　　　　　　　　　第２００号　　２０１７年１月７日

◇東福岡が２年ぶり２回目の高校３冠◇

ラグビーの２０１６年度第９６回全国高校大会決勝は、２０１７年１月７日、東大阪市の花園ラグビー場で、２年ぶりの王座復帰で高校３冠を目指す東福岡（福岡）と２連覇狙う東海大仰星（大阪）が争い、東福岡が２８―２１の７点差で勝利し、２年ぶり６回目の優勝を飾った。

東福岡は、２０１６年４月の第１７回全国選抜大会で２年ぶり５回目の優勝を飾り、夏の第３回全国７人制大会でも２年ぶり２回目の優勝しており、２０１４年度に続く、２年ぶり２回目の高校３冠を達成した。

東海大仰星は、５年ぶり２回目の準優勝にとどまった。

両校の決勝対戦は、２０１１年度第９１回以来、５年ぶり３回目で、東福岡が２勝１敗と勝ち越した。

準々決勝、準決勝を含めた大会通算では４年連続８回目の対戦で、４勝４敗の五分となった。

東福岡は、風の強かった準決勝で、風下の前半に、御所実（奈良）の強力モール攻勢を受けて８―１９と１１点差リードされたが、風上の後半にパワー突進と素早い展開などで逆転し、２５―２４の１点差勝利していた。

東海大仰星は、準決勝で、風下の前半はパワー豊かな桐蔭学園（神奈川）に２トライを奪われ、７―１４とリードされたものの、素早く前へ詰める結束した攻撃的防御で対抗し、風上の後半は素早い縦突進と展開で逆転し、２９―２１と８点差勝利していた。

風がほとんどなく絶好のコンディション。

前半立ち上がりから大きな展開で突破を狙った東福岡が、素早く前に詰める好防御の東海大仰星を抜き切れず、１９分にＣＴＢ森のトライなどで７―０とリードするにとどまった。

後半はトライの取り合いとなったが、東福岡がサインプレーで突破を図り、ＷＴＢ焼山がトライし、１４―０と突き放した。

しかし、東海大仰星は、１０分までに、思い切りよく展開、スピード突進して２トライを奪い、１４―１４の同点に追いついた。

それでも総合力にまさる東福岡は、１３分にバックスの好走でＣＴＢ堀川がトライし、１６分にも逆襲から堀川が２つ目のトライして、２８―１４と圧倒した。

２０分すぎから２５分にかけゴール前から突進押し込みを連続した東海大仰星は、ＰＲ谷口がトライしたものの、さらなる反撃がつながらず、押し切られた。

準々決勝、準決勝とパワーあふれる個人の縦突進突破にこだわって苦戦を続けた東福岡が、開始早々から大きな展開で、東海大仰星を振り回しにかかった。

しかし、東海大仰星の防御は、スピーディーで厳しい。

東福岡の大きなパスをインタセプトすると一気の逆襲展開。

これを東福岡は、抱えて倒す懐の深い防御で抑え込む。

互いが、こぼし合ったボールの奪取戦が激しさを増し、１９分に東福岡は、こぼれ球を奪った森が、密集サイドをスルスルと抜け出し、走るコースを変えながら東海大仰星の防御をかわして、６０㍍独走トライ。

自らゴールも決めて、東福岡が７―０とリードした。

ボールへの集中で、好防御の東海大仰星の一瞬のスキを突いた好走だった。

東海大仰星は、結束よくモールを押し込み、速い展開、速い突進で逆襲し、前半終了まで東福岡ゴールをおびやかし続けたが、東福岡のゴール前のパワー防御は確実だった。

後半は、２分に東福岡が、スクラムからサイドを突き、ラックサイドでサインプレー。

ＳＨ隠塚がオープンへ展開と見せて、逆サイドから突進したＬＯ箸本にバックパス。

箸本がゴールへ強力突進し、ラックサイドを焼山がスッと抜け出してトライを加えた。

森のゴールで東福岡が１４―０とリードを広げ、ペースをつかんだかに思わせたが、東海大仰星の果敢な逆襲が続いた。

６分にラインアウトから展開して、ラックから好パスをつなぎ、ＷＴＢ宮崎が左隅にトライ。

ＣＴＢ松本が好ゴールを決めて７点差。

１０分にはラックサイドを一直線にスピード突進して押し込み、ＦＬ山村がトライし、松本のゴールで、東海大仰星は同点に追いついた。

それでも、東福岡には、余裕があった。

１３分にスクラムから展開すると、焼山がタッチライン際を好走し、内の堀川に好パス。

堀川が４０㍍独走して、再リードのトライを奪った。

ＳＯ丸山のゴールも決まり、再び７点差のリード。

しかも、キックを使う臨機応変さで、前進しながら、１３分には森がゴールへショートキックし、ボールを奪って押し込みの連続。

東海大仰星がボールを取り返して、キック前進を狙ったが、これを逆襲して、堀川が２つ目のトライを奪い、丸山の好ゴールで、東福岡は２８―１４と再び１４点差にリードを広げた。

強力パワーのＦＷが圧力をかけながら、俊足バックスが仕掛ける東福岡の一体の攻撃は見事だった。

それでも、ひるまない東海大仰星は、２０分すぎからゴール前で突進、押し込みを繰り返し、２５分に谷口がトライし、松本のゴールで７点差に迫り、さらに東福岡ゴールをおびやかしたが、パワー防御にあって、つなぎミスが出て、押し切られた。

鍛え上げたパワーを一体の攻防に集中させた東福岡は、多彩な攻撃を誇り、春の好ダッシュを支えたスピーディーな展開をパワーアップする中で開花させた。

高校３冠にふさわしい工夫があった。

素早く前に詰める低い防御、一気の展開、突進と、２０１５年第８回ワールドカップで躍進した日本代表を、ほうふつとさせる東海大仰星は、結束と集中の重要さを教えた好チームだった。

ベスト４の実力接近が特徴的な今大会は、高校ラグビーの意欲の高さを感じさせて、頼もしかった。

２０１７年１月７日記