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◇トップ１０の自覚が窮地で生きた◇
第８回ワールドカップ（Ｗ杯）後に新たなスタートを切った世界トップ代表による南北対抗が始まった。
エディー・ジョーンズ新ヘッドコーチのイングランド代表は、欧州６カ国対抗の全勝優勝に続き、Ｗ杯準優勝の豪州代表にも快勝して名門復活を印象づけた。
アイルランド代表は、前半に退場者を出し、シンビンもあって６０分間近くを１３人から１４人で闘いながらも、Ｗ杯３位の南アフリカ代表を破った。
敗れたとはいえウェールズ代表は、王者ニュージーランド代表に対し、相手本拠地で前半をリードする健闘だった。
Ｗ杯で不振だった北半球勢が南半球に乗り込んで、意欲的な逆襲ぶりが注目される。
若い力を育てながらの争いに、早くも３年後の第９回Ｗ杯へ向けた代表強化が勢いづいている。
日本代表も、後半２７分間を１４人で闘う窮地に立ちながら、世界トップ１０入りの自覚から、攻防に集中力を発揮してカナダ代表に競り勝った。
第８回Ｗ杯代表が７人に若手有望株を加えた日本代表は、Ｗ杯代表が１０人を数えたものの全体としては若返って、パワーアップしたカナダ代表の挑戦を受ける立場だった。
日本代表は、前半立ち上がり、防御の出足が鈍く、カナダ代表のパワー突進に受け身となり、縦突破やゴール前からの押し込みで２トライを先取された。
ラインアウトを抑えられて苦しみ、スクラムを押され、連携も悪かった。
しかし、２０分をすぎて、ようやく前へ素早く詰めて押し込む攻撃的防御のリズムをつかみ、結束のいいモールを押し込んでトライを奪った。
Ｗ杯躍進の原動力がよみがえった。
タックル・ターンオーバーも増えてペースを引き寄せ、ＳＯ田村が逆転ＰＧ。
前半を１点差リードした。
後半も立ち上がりは、勢いが続きながらもミスが多く、スクラムから再逆転トライを奪われた。
それでも田村がＰＧして流れを変え、スピーディーな展開、突進の連続攻撃から１３分に相手ゴールライン上でのラック押し込み。
勢い余ったＦＬ細田が激しく飛び込んだが、ＴＶビデオ判定で危険なプレーとされ、一発退場処分。
ペースを取り戻したとたんに、１４人の大ピンチを招いた。
Ｗ杯以前の代表なら大きく崩れたかもしれない。
しかし、飛躍を経験したＷ杯代表たちは落ち着いていた。
攻撃的防御を徹底し、ラインアウトで健闘し、スクラムを押し、速い展開から縦突進を繰り返した。
２９分にラインアウトから素早く展開して、交代ＳＨ茂野の突破からＦＢ松島がスピード豊かに再々逆転トライを奪い取った。
１人少ないハンディを背負いながら、集中した速い攻防に徹した好トライだった。
攻めながら田村がＰＧで突き放すなど、試合展開もトップクラスのうまさを見せた。
この後、またもカナダ代表のパワー攻めを受けてしまい、土壇場の体を張った防御で逃げ切った。
試合全体としては悪い展開だったが、相手のゴールキックミス続出にも助けられ、Ｗ杯代表たちの自信が、窮地で得意の攻防をよみがえらせた勝利だった。
２度のＷ杯で引き分けた相手を勝負強さで抑え込み、レベルで上回ったことを証明した。
Ｗ杯代表たちの世界トップ１０の自覚は高く、若手にも引き継がれてきた。
試合の立ち上がりからマイペースで闘えるほどではないが、精神的にタフになった。
少なくとも欧州６カ国対抗勢には、互角の試合が挑める気構えは育っている。
アジア選手権では、若手が圧倒的な強さを示し２連覇を飾ったが、防御が受け身になるとミスを重ねた。
積極的に、攻撃的に攻防を繰り返す姿勢の堅持が、若手の課題だろう。
日本代表は、新旧のバランスが取れている。
結束を意識し、素早い攻撃的防御を徹底すれば、昨年のＷ杯より攻撃的にレベルアップできる可能性を持つ。
さらなるセットプレーの強化がカギを握る。
２０１６年６月１６日記
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