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◇個人能力の飛躍を目指す挑戦◇
日本代表候補らによるサンウルブズのスーパーラグビー挑戦が始まった。
まずは南アフリカのチームと争い、力を試した。
初戦のヨハネスブルクに本拠を置くライオンズは、第８回ワールドカップ（Ｗ杯）出場者はいなかったものの、南アフリカ代表経験者４人を含み、高い防御力を誇るチームだった。
サンウルブズは、同Ｗ杯日本代表10人とサモア代表、米国代表が各１人に南アフリカ代表経験者１人で挑戦し、４トライを奪われ１トライにとどまって１３―２６で敗れた。
しかし、互角に近い試合展開を見せて、まずまずのスタートだった。
チームとしての練習不足から、スクラムを押し込まれ、モールも押されて、ラックへの結束スピード不足で反撃できず、素早い防御の出足が不足していた。
それでも、遅れながらも執拗なタックルを徹底して、ライオンズの展開攻撃をほとんど抑えた。
とはいえ、ゲインを越えることがほとんどできず、展開連続攻撃は不発。
個人の突破力、防御力の飛躍が不可欠なことを教えられ、結束して対抗できないと好機を作れない現状を如実に示した。
とりわけ、ライオンズとの違いが大きかったのは、個人の防御力だった。
タックルのスピードがＷ杯時よりも遅れていたことで、１対１で前へ倒す勢いがなく、一瞬、後追いになる場面が多く、ゲインを越えられた。
素早く前に詰める意識や低い姿勢はＷ杯と変わらなかったが、スピード不足で止め切れなかった。
世界一の防御力を誇る南アフリカ代表をスピードで上回ることで奇跡の勝利を成し遂げた日本代表だったが、結束の速さが原動力だった。
南アフリカの防御は、個人の防御力の高さを土台に組織化されたもので、個人が局面の防御責任を貫徹するところに特徴がある。
ライオンズを見ていて、代表クラスの競技者がその能力を鍛え上げていることがよくわかった。
それがスキのない組織防御となっていた。
パワーとスピードに、瞬時の判断と多様な対応の力である。
サンウルブズは日本代表候補たちの個人能力を飛躍的に高めることを目指して結成されたのだから、個人能力の課題が明確になった有意義な初戦と言えるだろう。
第２戦のブルームフォンテーンに本拠を置くチーターズは第８回Ｗ杯代表１人と代表経験者２人を含む攻撃的なチームで、サンウルブズは初戦と同じメンバーで臨み、惜しくも３１―３２の１点差逆転負け。
前半、ＷＴＢ山田が３トライするなど４トライを奪い、後半４分まで３１―１３と１８点差リードしながら３連続トライを浴びて逆転された。
スクラムを鍛え直して、ＦＷ戦を優位に進め、前半は展開攻撃やＳＯピシのキックパスなどを使って攻撃力を爆発させたが、後半、防御の出足が鈍り、強力な密集サイドの縦突進を受けて防御網を切り裂かれた。
チーターズは初戦で第８回Ｗ杯４位のアルゼンチン代表で構成されたジャガーズに前半４トライを奪って２４―３と大量リードしながら、後半立ち直ったジャガーズにＦＷが押し込まれ、４トライをたたみかけられて１点差逆転負けしていた。
まるで正反対の形で初勝利をあげた。
サンウルブズは、この試合でも個人の防御力不足が露呈した。
日本代表が、世界トップ１０の実力を定着させるためには、個人の防御力アップが不可欠であり、とりわけ瞬時の判断と多様な対応力を磨くことが必要だが、それには厳しい試合経験を積むしかないだろう。
その意味では、スーパーラグビー参加が有効なことを証明した。
サンウルブズは、第８回Ｗ杯の日本代表と比べるとＦＷ第３列が攻防ともに弱い。
世界トップが強力なＦＷ第３列を擁していることを考えれば、その強化が急務だ。
日本代表もサンウルブズも外国出身者がそのポジションを占めているが、日本人競技者が育つ条件と総合的な強化策を検討する必要があるだろう。
２０１６年３月１５日記
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