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◇Ｗ杯後の期待感にどう応えるか◇
２０１５年度のトップリーグが開幕し、３連覇目指すパナソニックが好スタートを切った。
第８回ワールドカップ（Ｗ杯）で躍進した日本代表の成果をどう引き継ぎ、発展させるかが注目される１３回目のトップリーグであり、スーパーラグビーに参入するサンウルブズのメンバーを選び出す役割もある。
日本代表の成果は、スクラムの安定、結束パワーによるスピーディーな突破と押し込み、素早く前へ詰める防御の徹底から意欲的な逆襲姿勢の堅持、着実な試合運びに集約される。
これらを、日本ラグビーのリーダーであるトップリーグ・チームが意識して追求しているかが重要だ。
パナソニックは開幕戦の対サントリー戦で、さらなる発展方向を示した。
ＳＯバーンズ、ＣＴＢピーターセンがリードし、日本代表を上回る世界トップに近いゲームの組み立てを見せたともいえる。
安定したスクラムと、確実な防御で相手を追い込みながら前へ前へと進み、ミスを突いて一気の展開、突破。
史上初のＷ杯２連覇、最多の３回目の優勝を飾ったオールブラックスを思わせた。
スピーディーなプレーを連続して、攻撃的防御からの逆襲を意識的に追求し、バックス、ＦＷ一体の展開で突破して、トライを奪う。
これが第８回Ｗ杯の提起した世界ラグビーの発展方向だが、そこへ近づくヒントをパナソニックは示した。
サントリーは持ち味の連続攻撃で挑んだが、攻防のスピードで圧倒され、ミスを多発した。
しかし、ひと工夫あれば、肉迫できる。
単なる堅守ではなく、堅守を土台とした攻撃の多彩さである。
そのためには、攻防の基礎となるスクラムの強化、安定が不可欠なことをＷ杯は教えた。
同時に、攻撃の大胆さがなくてはラグビーの醍醐味は生まれないことも課題として提示している。
さらなる個人能力の向上が求められ、努力目標は明確になった。
開幕２日目が全国的に雨模様の悪条件だったとはいえ、ノックオンや不用意なパスが相変わらず多かったのは、トップリーグ・チームの自覚不足としか言いようがない。
開幕試合は各地で多くの観衆を集め、日本代表が盛り上げた日本ラグビーへの期待の強さを反映していたが、Ｗ杯を目にした観衆の多くは緊張感の高いゲームの中で、高度なプレーの連続を求めている。
パワフルでスピードのある東芝や安定した攻防の神戸製鋼、しぶとく勝ち抜くヤマハ発動機、パワーのあるトヨタ自動車は、実績があるだけに、パナソニックの独走を止める底力があるはずだ。
有力外国出身者を加えたＮＴＴドコモなど、下剋上を演出できる力も育っているだろう。
Ｗ杯代表など有力外国出身者が多数参集した短期決戦のトップリーグは、一皮むけたスピード感とプレーの工夫に富んだ激戦が期待される。
有力外国出身者がチームに溶け込む後半戦は、波乱の連続を予想したい。
関東大学対抗戦では、帝京大が無敵の強さで５連覇を達成したが、他大学との実力差が大きすぎて、ゲームに緊張感がない。
勝利至上が覆っているが、厳しい努力が見えてこない大学が多すぎる。
大学４年間が無駄な時間になっては、日本代表の将来は見えない。
有望な高校ラガーメンが、トップリーグで改めて基礎から鍛え直す必要が生まれ、あるいは日本代表に選ばれて、さらに基本プレーを覚え直すのでは、継続した強化にはならない。
Ｗ杯での日本代表の躍進は、日本ラグビーのレベルアップのあり方にも大きな問題提起となっているだけに、大学ラグビーのあり方が厳しく見直されるシーズンでもある。
開幕戦は入場券が完売なのに空席が目立って、興行的な不手際に、日本協会は批判の矢面に立った。
しかし、運営にとどまらず、日本ラグビーのレベルアップを定着させるためには、どんな態勢が必要なのかを真剣に考えるべきシーズンなのである。
２０１５年１１月１６日記
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