ラグビー通信号外８４

　　　大野晃のラグビー通信　

　　　　　　　　　　　　第１８５号　２０１５年１０月１９日

第８回ワールドカップ特集１２　

◇アルゼンチン躍動し、欧州城陥落◇

ラグビーの第８回ワールドカップ（Ｗ杯）大会は、１８日、ベスト８による決勝トーナメントの準々決勝２試合が行われ、ベスト４が決まった。

午後１時（同１８日午後９時）から、カーディフ市のミレニアム競技場で、準々決勝３として、一次リーグＤ組１位のアイルランド代表と同Ｃ組２位のアルゼンチン代表が争い、躍動するアルゼンチン代表が４３―２０で欧州ナンバー１のアイルランド代表を降し、２大会ぶり２度目のベスト４に進出した。

同日午後４時（同１９日午前０時）から、ロンドン市のトゥイッケナム競技場で準々決勝４として、一次リーグＡ組１位の豪州代表と同Ｂ組２位のスコットランド代表が対決し、豪州代表が、後半３９分に劇的な逆転ＰＧで３５―３４と、スコットランド代表に１点差勝ちした。

アルゼンチン代表と豪州代表は、２５日午後４時（同２６日午前０時）からロンドン市のトゥイッケナム競技場で準決勝を争う。

ベスト４は、史上初めて、すべて南半球勢が占めた。

南半球４強国によるラグビー・チャンピオンシップとＷ杯の頂点を極める争いは、同じものになってしまった。

もし、ベスト４に欧州勢が残るとすれば、欧州６カ国対抗２連勝のアイルランド代表しかないと予想していたが、躍進・アルゼンチン代表に走られた準々決勝の試合に、南半球強国と欧州強国の質の違いと力の差が、明確に現れていた。

パスプレーによる大きな展開攻撃や結束パワーによる押し込み攻撃、素早く前に出る防御など、あらゆるプレーでスピードに大きな差があった。

南半球勢は、スピードに乗って、時に、リスクの大きい攻撃に出る大胆さを持ち、もっとも堅実な南アフリカ代表ですら、相手によっては展開勝負を挑む。

欧州勢は、理にかなった確実な攻撃と堅い防御で安定した試合展開を求める。

しかし、それだけ面白みに欠ける。

そんな欧州勢の中では、アイルランド代表は、意欲的に大きな展開突破を目指す南半球勢に近い攻撃力を持っていたはずなのだが、キック中心だった攻撃から一気の展開突破に変身したアルゼンチン代表の思い切りのいい攻めに、前半立ち上がりから、飲み込まれたようだった。

アルゼンチン代表は、ＳＯサンチェスが大きな展開を仕掛ける。

２分に、ラックからＦＬマテラが突進し、速いパスを受けたＣＴＢモロー二がタッチライン際を好スピードで突破し先制トライ。

防御の堅いアイルランド代表の手が出なかった。

さらに９分にはスピードに乗った連続攻撃から、ＷＴＢコルデロがインゴールへキックして、アイルランド代表防御網に走り勝ったＷＴＢイモフがトライを加えた。

サンチェスのゴールキックは確実で、始まって１０分間足らずで１４―０のリード。

さらに１２分にサンチェスがＰＧを加え、１７―０ものリードに広げた。

立ち上がりのあっという間の失点がアイルランド代表には重くのしかかる。

ＣＴＢヘンショーらが突破を試みるが、アルゼンチン代表の姿勢の低い防御や押しのあるラックに押され気味で、スピードに振り回された。

１６分にＰＲエレラがシンビンで、アルゼンチン代表が１４人になって、ようやく落ち着いたアイルランド代表の反撃が始まる。

バックスのリード役のセクストンが負傷欠場で、控えＳＯマディガンでは展開のリズムがしっくりいかなかったようだが、マディガンのＰＧで追撃を開始。

サンチェスにＰＧを加えられたが、２５分に、ラックを押し込んで速い展開で、交代出場のＷＴＢフィッツジェラルドが突破、独走してトライを返した。

アルゼンチン代表が２０―１０とリードしたが、スクラムを押し込むようになったアイルランド代表が優勢となった。

しかし、アルゼンチン代表の速い防御に、展開しても突破できない。

後半は、アイルランド代表が奮起して、３分にＰＫタッチキックのラインアウトから展開し、フィッツジェラルドの突破から、ＦＬのＪ・マーフィーがトライし、マディガンのゴールで３点差に迫った。

しかし、この後が攻め切れない。

ＰＧ合戦をサンチェスがリードして、アルゼンチン代表が２６―２０と６点差に広げ、２８分にスクラムからサイドをサンチェスが突破し、展開して速いパスをつなぎ、ＦＢトゥクレットが振り切ってトライ。

アルゼンチン代表は、３３―２０と突き放すと、勢いづいて、３２分にはＦＷ突破から展開して、イモフがスルスルと独走し、２つ目のトライを加え、勝利を決めた。

走る速さでアルゼンチン代表バックスが圧倒したが、一気に抜いて出る勢いは、ラックに素早く結束してボールを奪う機動力豊かなＦＷのたまもの。

パワーでは上回るアイルランド代表だが、アルゼンチン代表の素早い動きを止められず、受けに回って、突き放された。

ケガ人続出も響いたようだ。

欧州勢の最後の砦だったスコットランド代表は、思い切った展開勝負に出た豪州代表に５トライを奪われた。

しかし、３トライし、ＳＨのＧ・レイドロー主将が５ＰＧするなどしてスコットランド代表が終了目前まで３４―３２と２点差リードしたが、後半３９分に豪州代表のＳＯフォリーが劇的な逆転ＰＧを決め、豪州代表が１点差で押し切った。

　　　　　　　　　　　　　２０１５年１０月１８日記　