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◇スピード結束で攻撃的防御◇
ワールドカップ（Ｗ杯）年度がスタートして最初の全国大会である第１６回全国高校選抜大会で、大阪勢による決勝を制した東海大仰星が、９年ぶり２回目の王座に就いた。
雨中戦となった決勝で、東海大仰星は素早い結束で攻防をリード。
モールを押し込み、スクラムで圧力をかけ、ミスを突いて３トライを奪い、粘りの堅い防御で大阪桐蔭のパワフルな突進を抑え込んで零封した。
平均体重で４㌔近く下回るＦＷが素早く組んで間髪入れず押し込むモールと突き上げるスクラムの強さで圧倒したが、その結束の速さ、堅さは、日本代表が目指すスピード攻防と同じ方向性を示していた。
とりわけ一歩でも前へ出て、素早く結束して押し込む確実な防御から一気の逆襲を狙う意気込みが際立っていた。
体力で劣っても、結束のスピードでパワー対決を制すことができることを体現し、プレースピードの重要性を改めて実感させた。
ベスト４は常翔学園、流経大柏を加え、大阪３校、関東１校だったが大型化が顕著で、昨年度高校３冠の東福岡を目標に、この時期は個人能力アップや展開攻撃に力を入れているようだった。
しかし、東海大仰星はプレーヤー自身が、結束をより重視して攻撃的防御からの攻勢を意識的に追求していた。
個人能力の向上はトップを目指す必須の条件とはいえ、スピーディーな結束を意識することも不可欠である。
日本ラグビーがさらなる飛躍を狙う４年後のＷ杯開催へ向け、その土台となる世代に、忘れかけていた伝統の団結意識がよみがえってきた。
昨年度の第９４回全国大会ベスト４はこの大会の準々決勝までにすべて敗れ、来年正月に向かい、大激戦の大阪をはじめ全国的に厳しい競り合いが続くことを予感させた。
７人制の日本代表は、ワールドシリーズ第７戦の東京セブンズでベスト８によるカップ戦に勝ち進んだ。
記録的には１９９９年―２０００年の第１回シリーズ第９戦の東京大会以来、１５シーズンぶり２回目のカップ戦進出だったが、第１回は各国の取り組みや出場資格などが未分化だったから、実質的には初のベスト８進出と言えるだろう。
優勝経験のあるサモア代表に快勝したことが飛躍のバネとなったが、１勝１分け３敗で終わったことも事実である。
サモア代表には、素早く前へ詰める防御で、サモア代表のボール回しのリズムを奪ったことが勝利につながった。
１５人制日本代表が目指すスピード防御が７人制でも威力を発揮した。
とはいえベスト８に定着できるには、個人の攻防のプレースピードアップが大きな課題だろう。
走るスピードは世界トップにそん色ないのだが、タックルやボール奪取、一気の展開などは判断スピードを含めて、かなりの開きがあった。
優勝を争ったトップクラスは一段と組織的プレーを目指していたことが印象的で、個人能力アップと組織化が１５人制同様に求められているようだ。
女子の日本代表は、まだまだ個人の基本プレー習得が足りない。
７人制日本代表の強化には、トップリーグ勢や大学、高校で独自のチームつくりができる条件整備に知恵を絞る必要があるだろう。
日本代表は、いよいよ第８回Ｗ杯へ向かう仕上げの闘いに入った。
香港、韓国と実力派によるアジアチャンピオンシップでは、マイペースの圧勝街道が期待されるが、積み上げてきたスピーディーな攻撃的防御を支えに、多彩な攻撃に挑戦することを望みたい。
パシフィック・ネーションズカップで、その精度を高めて攻撃にも自信をつけねばなるまい。
Ｗ杯一次リーグの相手であるスコットランドは、今年の欧州６カ国対抗で全敗の最下位に転落したとはいえ、接戦の連続で、実力が落ちているわけではない。
南アフリカ代表は３回目の優勝を狙っており、サモア代表は巻き返しに懸命だ。
米国代表も新戦力が育っている。
挑戦者精神に富んだ日本代表の進撃が注目される。
２０１５年４月１５日記
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