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大野晃のラグビー通信 |
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号外１８０ ２０１４年１１月２０日 |
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※月刊誌ラグビーマガジンに連載中のコラム「楕円球界定点観測」から、２０１５年１月号（２０１４年１１月２５日発売）に掲載する原稿を転載致します。 大野 晃 |
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◇危うさと力強さ示した強化試合◇
世界ベスト８以上の実力派マオリ・オールブラックスを迎えた強化試合で、ジャパン・フィフティーンとしての日本代表は、あと一歩で歴史的な勝利にまで迫った。 ２連敗とはいえ、最終戦の２点差負けは、世界と争う地力向上を実感させた。 国際ラグビー機構の世界ランキングで９位に躍進した。 南半球３強国と欧州６カ国対抗勢に次ぐ、ひとけた順位につけたのは史上初めてである。 最終戦と同じ日の試合で、それまで９位のサモア、１０位のアルゼンチン、１２位のフィジーがそろって敗れ、１１位の日本がジャンプしたのだが、一時的にせよ、ベスト８は見えるところまで近づいた。 マオリ・オールブラックスは若いチームだが、そのスピードプレーは第１戦で日本代表に苦い経験を味あわせた。 それでも日本代表が最終戦で後半３７分までリードできたのは、自らの闘い方を貫いたためだった。 第１戦では、自陣からでも連続攻撃を仕かけ続ける積極攻撃策を取ったが、ラック結束の遅れで押しが弱く、速いタックルにあって、つなぎミスが出て、攻めながらターンオーバーされて６トライを奪われる大敗だった。 しかし、スクラムとラインアウトからのモールで認定トライをもぎ取った。 セットプレーでは互角以上の争いができた。 一瞬のスピードに振り回されただけだった。 その教訓を１週間後に生かした。 最終戦では、前半立ち上がりのマオリ・オールブラックスのスピード逆襲を厳しいタックルで阻止し、意識的にラックへの結束をスピードアップして押し込んだ。 日本代表は、３度にわたりＰＫタッチキックのラインアウトからモールを押し込んだ。 対応を強化したマオリ・オールブラックスは簡単には退かず、日本代表の目論見は失敗した。 それでも、前へ出てのラックの押しの強さは、連続攻撃のテンポを高め、先にトライ場面を作った。 ＴＶビデオ判定でトライは認められなかったが、マイペースの攻撃リズムを呼び込んだ。 とはいえマオリ・オールブラックスは一瞬のスキを見逃さず、スピード展開で２トライを奪った。 しかし日本代表は、スクラムを押し込んで優位に立ち、相手のラインアウトを揺さぶって、前半終了近くには、連続攻撃で山田のトライに結びつけた。 攻防ともに素早く前へ出ることや、押し込んでボールを出すことを徹底したことで、攻撃ミスが減り、防御に勢いがついて、マオリ・オールブラックスの多彩な攻撃をしばった。 後半は、スクラムで圧力をかけ続け、スクラムを押し込んで認定トライを奪い、ＰＫタッチキックのラインアウトからモールを押し込む。 得意の結束プレーにかけて、五郎丸の２ＰＧで逆転した。 ３７分にカウンター攻撃を受け、意表を突くタッチからのクイック・スローインで大きく展開されて再逆転トライを奪われたが、自らのペースで攻め続けることの重要性を再認識したことだろう。 マオリ・オールブラックスは、ボクシングのカウンター・パンチャーに似ていて、ミスパンチを見逃さず、一気にラッシュするタイプだった。 第１戦は、そのスピードにとまどった日本代表だったが、最終戦は確実にパンチを繰り出して、追いつめた。 テストマッチでは先手、先手と攻め続け、受けに回らないことが勝ち切る条件だ。 強力な相手に、それを実践した意味は大きい。 惜敗とはいえ、勝ち抜く感覚はつかんだはずだ。 一気のスピード展開についていけなかったのは、ファーストタックルの鋭さが不足しているからだろう。 攻防の切り替えのスピードも足りない。 個人能力の大きな課題だ。 スクラムの成長で、展開に余裕は出てきたが、変化をつけた連続攻撃の多彩さは、まだ身についていない。 来年のワールドカップで対戦する南アフリカやサモアは、マオリ・オールブラックス同様に、厳しい防御からミスを突いて、一気に逆襲することを得意としている。 日本代表が、自らの危うさと力強さの双方を実体験できた格好の強化試合だった。 ２０１４年１１月１３日記 |
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