大野晃のラグビー通信  


 

            号外168 2013年11月20日

 

                              

※月刊誌ラグビーマガジンに連載中のコラム「楕円球界定点観測」から、2014年1月号(2013年11月25日発売)に掲載する原稿を転載致します。                       大野 晃 


 

       ◇いまだ速さと精度が足りない◇

  

 

 

日本代表は、ニュージーランド(NZ)・オールブラックスとスコットランド代表に連敗した。

 

NZ代表には、五郎丸の2PGだけでノートライに抑え込まれた。

 

対NZ最少失点54、最少点差48の接近だったが、ほぼ防戦一方の完敗。

 

NZ代表に奪われた8トライのほとんどはミスが起因だった。

 

ハイパント処理ミスで2トライ。ハンドリングミスから2トライ。スクラムを押し込まれて3トライ。うち1つはマイボールのスクラムでボールを奪われた。そして、モールを押し込まれて1トライされた。

 

それでも日本代表は、NZ代表の一体化して一瞬沈み低く突き上げるヒザのバネを使った強力なスクラム技法に、低い姿勢で対抗し、速い防御で、仕掛けられた展開プレーをことごとく阻止。

 

前半立ち上がりは互角の争いで、22分に五郎丸が2つ目のPGを決めて1点差に迫った。

 

しかし以後は、出足鋭く抱え込んで押し倒す強烈なタックルを受け、ラックは押し込まれて球出しが遅れ、パススピード不足でかぶられる形になり、展開できず、縦に割れず、連続攻撃に移れないまま防御に終始。

 

仕掛けるきっかけさえつかめなかった。

 

NZ代表はマコウ主将がフル出場し、カーターが開始から50分間リードして、リザーブ組と新人の、いわば2軍を引っ張る布陣。

 

スクラムを圧倒できないのが誤算だったようで、仕掛けた展開攻撃はほぼ失敗する出来の悪さだったのだから、日本の接近度は割り引く必要がある。

 

スコットランド代表には後半、福岡が2トライを奪い、1点差で食い下がる互角の争いだったが、14分にバックスのトライで突き放された。

 

さらに残り20分間に、ホラニのシンビンで14人中にパワーで2トライ、五郎丸のシンビンで再び14人で1トライを加えられ圧倒された。

 

スコットランド代表は、日本代表がウェールズ代表に勝ち、NZ代表に健闘したことで警戒を強め、ベスト布陣の必勝態勢だった。

 

日本がアジア代表になると、2015年第8回ワールドカップ(W杯)一次リーグで対戦する相手となるから、なおさらだったのだろう。

 

世界ベスト8クラスの代表が、ベスト布陣で日本代表に対するのは、W杯を除けば、ほとんど例がない。

 

欧州トップを争う伝統国でも、ベストの布陣でなければウェールズ代表のように足元をすくわれると、日本代表の実力アップを評価していたわけだ。

 

奪われた6トライは、やはり日本代表のミスや反則が起因だった。

 

ぬかるむグラウンドでパワー対決になりがちだったが、日本代表はスクラムで苦しみ、突進パワーに受け身となった。

 

それでも好防御で食らいつき、速い展開連続攻撃で対抗した。

 

後半はスクラムも押し込んだ。

 

だから大差の2連敗にも悲観する必要はまったくない。

 

日本代表の攻防策は十分に世界と争えることを証明した。

 

NZ代表のスクラム技法は、日本が伝統的に追求してきた8人の一体化策であり、速いつなぎも同様で、日本には蓄積があるはずだ。

 

世界トップのパワーに対し、結束した組織力とスピードで対抗する目途がついたと言えるだろう。

 

それでも大差がついたのは、まだプレーの速さと精度が不足しているからだ。

 

スピードに乗ったプレーの正確さをさらに高めなければ、互角の争いを最後まで続けることはできない。

 

ミスから自滅するパターンを克服することは、最大の課題であり続ける。

 

11月末から、いよいよ、トップリーグは王座を争う第2ステージが始まる。

 

第1ステージのA、B各組4位以上のベスト8によるA組は、前回同様の常連7チームと第1ステージB組で4位に食い込んだキャノンが入った。

 

キャノンは実力を蓄え、初めてベスト8に躍進した。

 

また復帰したばかりのクボタはキャノンと同勝率、同勝ち点と健闘したが総得失点差で及ばず、惜しくもB組となった。

 

前回7位の名門・近鉄はB組に落ちた。

 

激戦の中で、素早い正確なプレーの継続が期待される。

 

                         2013年11月13日記


   

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