|
大野晃のラグビー通信 |
|
号外１６６ ２０１３年９月２０日 |
|
※月刊誌ラグビーマガジンに連載中のコラム「楕円球界定点観測」から、２０１３年１１月号（２０１３年９月２５日発売）に掲載する原稿を転載致します。 大野 晃 |
|
◇混戦模様のトップリーグ序盤◇ トップリーグは、猛暑と風雨のナイトゲームを中心に、第一ステージ前半の第３節を終わって混戦模様となっている。 常勝・サントリーがＮＥＣに１点差負けして、公式戦２５連勝でストップした。 パナソニックはキャノンに敗れた。 全勝は東芝と神戸製鋼だけだが、苦戦している。 前回の上位と下位の力の差が縮まって、接戦の連続である。 開幕前の練習試合で不振だったサントリーだが、スミス、デュプレアが戻って第２戦までは盤石だった。 結束が良く、押しのあるラックから速い球出しで、デュプレアが速い球回しでテンポを上げ、スミスが密集サイドを突破して、ラックから展開するとニコラスが突破口となって突進する。 その攻撃リズムに圧倒されて、受け身になると反撃機もつかめない強さを痛感させられたのが完敗したトヨタ自動車だったに違いない。 しかし、スミス、デュプレア、ニコラスが自在に動けないと、パワーはあっても驚異的な連続攻撃の決定力が落ちるのが不安材料だった。 とはいえ、弱点を突くには、セットプレーで負けず、ラックの結束スピードで上回り、素早く前へ詰める防御を徹底することが必要だ。 どのチームが成し遂げられるか注目していたが、持ち前の防御力が復活したＮＥＣが見事に成功させた。 異様な蒸し暑さの中で前半立ち上がりから、２人がかりでもサントリーの３人を抑え続け、自由を奪った。 ラックのスピードで上回り、大きく振って縦突破。 新加入のウェブが展開テンポを高め、ブリューの突破力が生きた。 ２トライを先取するなど１８点のリードで王者を動揺させた。 とはいえ、勢いよく前へ詰める防御はオフサイド気味となり、シンビンを招いた。 さすがサントリーは人数差の利点を生かしてパワーで押し込み、一気に追い上げる。 後半もパワーで押し込み、ＮＥＣは振り切るために温存していた巨漢ナドロを投入しながら、皮肉にもシンビンで裏目に出て、サントリーが逆転した。 ところが、落ち着きを取り戻したＮＥＣは狙いどおり、ナドロの突進で再逆転し、勝利をもぎ取った。 ＮＥＣの作戦勝ちだった。 サントリーは、ラックをスピード支配し続けられないと苦しい。 パナソニックは、強風下で、前半風下ながらトライを先行したが、前へ出る防御が甘い。 トエアバをＳＯに起用したキャノンは、ＷＴＢハビリ、ＣＴＢベネットの外国出身トリオの連携と個人技で攻めまくり、逆転して、後半もリードを広げた。 連続攻撃で追うパナソニックだが、風上でキックからの安定した攻撃にこだわりすぎ、決定力に富む新加入のピーターセンを生かせなかった。 初戦で東芝を苦しめたキャノンの防御は大きく崩れることはなく、パナソニックを抑え切った。 前回の３強を倒した２チームは、共通して相手をよく研究したようだ。 前回の下位や復帰したチームの健闘が際立ち、３強はじめ前回上位チームは、自らの闘い方を確立しないと簡単には勝てない。 甘さを残せば足元をすくわれる厳しい争いが、さらに続きそうだ。 多くのチームが新たに有力外国出身者を迎え、刺激を受けた先輩の外国出身者が連携しながら個人能力を発揮し始めて、接戦をもたらしているのが特徴でもある。 全体としては、さらに防御力が高まり、工夫のある突破力を身につけた個人能力が不可欠なことを示す。 同時にスクラムの新ルールで、しっかり組んで間をおく強靭さがないと攻撃的に使えないことも、接戦に影響しているだろう。 速い展開を急ぐあまりに、セットプレーをおろそかにすると、逆に、リズムを失う。 各チームとも新人や２年目の若手を起用し、選手層を厚くすることを目指している。 新鮮な争いとはいえ、斬新な攻撃法はまだ見出せない。 観衆１万人以上の試合が一つもないのは残念だ。 ２０１３年９月１６日記 |
|
|
