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大野晃のラグビー通信 |
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号外１６３ ２０１３年６月２２日 |
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※月刊誌ラグビーマガジンに連載中のコラム「楕円球界定点観測」から、２０１３年８月号（２０１３年６月２５日発売）に掲載する原稿を転載致します。 大野 晃 |
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◇自らに徹してウェールズに初勝利◇
日本代表が、ついにと言うべきか、ようやくと言うべきか、ウェールズ代表から初勝利をもぎ取った。 １９７３年の初挑戦から４０年、１３戦目のテストマッチで念願を成しとげた。 伝統の英国系４協会（ホームユニオン）の代表に勝利したのは ８９年のスコットランド代表に対する初勝利以来、２４年ぶり２回目だ。 来日したウェールズ代表との第１戦は史上最少差の４点差負けで、最終戦での初勝利を大いに期待させた。 ２００４年以来、日本代表の国内での国際試合最多２１，０６２人もの観衆のほとんどが代表に熱い声援を送ったが、見事、期待に応えた。 異常な蒸し暑さやスタンドの熱気に後押しされ、相手が実質的な代表２軍とはいえ、自らの攻防策に徹して迷いなく勝ち抜いた。 自信を持って強豪に挑む代表たちを、４半世紀ぶりに目にした。 前半立ち上がりから先手を取りたかったのだろうが、相手も代表の名誉にかけて攻め立てた。 日本代表は確実な防御に徹し、切り返しを狙ったが、まだ、その力は十分ではなかった。 それでも、しっかりＰＧを決めて先行し、相手の度肝を抜くロングＰＧでリードした。 大胆に、流れを呼び込もうとした廣瀬主将も、応えた五郎丸も緊迫したテストマッチでの国際的な試合運びを身につけたようだった。 後半、鮮やかなサインプレーで逆転トライされたが、その直後から一気の攻勢に導いたのは、ニュージーランドでスーパーリーグの厳しさを体験した田中だった。 これまた大胆にサイドを突き、抜いて出る。 ウェールズ代表の防御網に混乱をもたらした。 それがマイペースに持ち込む起爆剤だった。 連続攻撃に勢いがついて前へ前へと押し込んだ。 こうなると判断がさえ、思い切りが良くなる。 受けた相手は、暑さに疲れが見えてミス続出だった。 第１戦で前半をマイペースでリードしながら、後半追いつかれてトライを奪われると、建て直しに苦しんだ試合運びの悪さが払しょくされていた。 パシフィック・ネーションズの相手を含め、日本代表はそん色のない攻防の力に成長している。 しかし試合運びが甘かった。 トンガとフィジーには、フワッと気の抜けたような立ち上がりで相手に先行され、追う苦しい展開になった。 一昨年のワールドカップ（Ｗ杯）から成長が見られなかった。 課題はパワーやスピードというより、自らの攻防策を徹底しながら相手を揺さぶってマイペースに持ち込む緊迫の試合運びができるかにあった。 俗に言う、勝ち味を知るである。 とりわけ、勝負どころを心得て一気に集中するということだ。 第１戦でウェールズ代表が見せつけた接戦での勝ち方である。 それができたからこそ、力を存分に発揮して初勝利をものにした。 マイペースならミスも消える。 だからといって、先手必勝意識が定着したとは思えない。 タックルからの逆襲は不足しているし、パワー突進を受けた時の結束は遅い。 ミスにつながる。 スクラムやラインアウトが安定したとは言いがたい。 展開攻撃の多彩さは、２軍とはいえウェールズ代表が上回っていた。 世界ランク１２位以上は、Ｗ杯２勝が必須だ。 ２０１５年Ｗ杯一次リーグを想定すると、日本代表は南アフリカ、サモア、スコットランド、そして米国かカナダが相手になる。 サモアは南アフリカでの４カ国対抗でスコットランド、イタリアを連破し、実力を高めている。 スコットランドには過去７戦して１勝。 目標はとてつもなく厳しい。 より攻防のスピードと確実さを高め、強気に、大胆に多彩な決定力を身につけねばなるまい。 試合運びしだいでは、当面のライバルたちに勝ち切る力を証明した歴史的勝利だった。 スコットランド代表に初勝利した宿沢ジャパンは、唯一のＷ杯１勝をあげた。 その勢いがよみがえってきたことは確かだ。 ２０１３年６月１７日記 |
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