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大野晃のラグビー通信 |
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号外１６２ ２０１３年５月２２日 |
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※月刊誌ラグビーマガジンに連載中のコラム「楕円球界定点観測」から、２０１３年７月号（２０１３年５月２５日発売）に掲載する原稿を転載致します。 大野 晃 |
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◇テンポは高いが受けるともろい◇
日本代表は、若手中心にアジア５カ国対抗で圧勝街道の６年連続６回目の全勝優勝を飾り、好スタートを切った。 それでも、世界ベスト１０入りを目指すには課題が多く、パシフィック５カ国対抗とウェールズ代表戦が正念場だ。 今春の欧州６カ国対抗で２連覇したウェールズ代表は、その控えメンバーと将来性のある若手による編成で乗り込んでくる。 アジア５カ国対抗の６連覇を決めた対韓国戦では、昨シーズンよりテンポアップしたスピーディーな連続攻撃で１０トライを奪う圧勝だった。 ラックからの素早い球出しとリズムに乗った展開で、速いつなぎを連続し、福岡、藤田の大学生ＷＴＢコンビが好スピードで抜き切った。 パワーとスピードで優勢なＦＷがスクラムでたっぷり圧力をかけたことが効いて、ボール奪取と球出しのスピードが増すとともに、ＨＢが速い展開に徹してトライラッシュを生んだ。 やや狭い間隔のラインで速いパスをつなぎ、安定していた。 とはいえ、連戦の疲れからか攻防の出足に鋭さを欠き、韓国の単調だが力強い縦突進を受けて押し込まれることが多く、不安を感じさせた。 防御も、ファーストタックルの踏み込みが不足して、後半は苦戦した。 スクラムを押し込んで建て直したとはいえ、韓国の防御が弱く、ミス続出に助けられた大勝だった。 アジア５カ国対抗４戦を合わせて４９トライを奪い３１６得点。 韓国に１トライされたが総失点は８と、まさにアジアでは無敵を証明した。 つなぎの要となった菊谷とＷＴＢで突破力を見せた今村が５トライ。 福岡、藤田がそろって４トライ。 速い展開で振り回し、スピードで振り切る日本らしさが出ていた。 何よりも、将来の主軸と期待される若手が思い切りよくプレーし、ベテランとかみ合ったことが最大の収穫だろう。 日本代表の攻め方に自信を持ってマイペースで立ち上がりから積極的に攻め続けた結果だった。 問題は、果たして、防御の強い世界トップを目指すライバルたちを上回る力に育ったか、である。 韓国戦で不安材料となった出足の鈍さが気になる。 相手が防御で粘ると攻めあぐんで、判断が悪くなる弱さも顔を出した。 ＦＷがパワーで圧倒できる相手なら、マイペースに持ち込んで攻防の判断もさえてくるが、パシフィック５カ国対抗やウェールズ戦では互角以上のボール奪取を確実にすることはむずかしい。 むしろパワー争いでは劣勢を覚悟しなければなるまい。 全員の結束したスピードで相手のパワーをかわし、ペースをつかむことができるかにかかる。 バックスでは、ＣＴＢ突破にスピードはあるが、パワフルな突進力には乏しいように見えた。 これだと走るスピードに富んだＷＴＢを十分に生かせないだろう。 アジアでは簡単にトライを生んだＷＴＢ突進の後を、どうつなぐかが大きな課題となる。 バックスリーの防御には甘さが残るだけに、どうＦＷと連携するかだ。 走り切るスピードでは合格点の大学生ＷＴＢコンビだが、つなぎの柱になる力や防御の強さでは、まだ発展途上だ。 スクラム強化に成果が見られ、結束して突破する力を備えたＦＷだが、ラインアウトには不安定さが残る。 つなぎミスがほとんどなくなって日本代表の印象を一新したが、防御の弱い相手ばかりだったため、割り引いて評価しねばならない。 ミスのないパスワークが、スピーディーな連続攻撃の核心である。 激しい当たりを受けても揺らがない体力が不可欠だ。 ジョーンズ・ヘッドコーチは大勝にも苦言を忘れない。 可能性に富んだ代表と確信しているからだろう。 自らの攻防法に徹し、休みなく大胆に挑めば、パシフィック５カ国対抗優勝とウェールズから初勝利をもぎ取ることも、夢ではあるまい。 ２０１３年５月１４日記 |
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