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大野晃のラグビー通信 |
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号外１６０ ２０１３年３月２２日 |
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※月刊誌ラグビーマガジンに連載中のコラム「楕円球界定点観測」から、２０１３年５月号（２０１３年３月２５日発売）に掲載する原稿を転載致します。 大野 晃 |
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◇知的鍛錬で新境地を◇
サントリーが日本選手権３連覇を達成して、２０１２年度シーズンは幕を閉じた。 サントリーは、トップリーグ、日本選手権を通じて公式戦１７戦全勝と、無敵の強さを誇った。 サントリーはトップリーグ開幕戦から日本選手権決勝まで、徹底して攻撃姿勢を貫き、攻撃テンポを高めながら、粘りの防御を強め、マイペースに持ち込んで圧倒した。 日本選手権決勝の開始早々にシーズンの集大成ともいうべきノーホイッスルトライを奪って力を見せつけた。 ＫＯボールを取って縦突進の連続からＳＨデュプレアがショートキック。 神戸製鋼が逆襲してくるのを狙いすまして激しいタックル。 ターンオーバーして、デュプレアが大きな飛ばしパスでＷＴＢ小野澤を走らせる。 小野澤がゴール前へステップで運び、ラックから逆方向に飛ばしパス。ＷＴＢ村田がトライした。 テンポの高い縦突進の連続で相手を後退させ、キックで逆襲を誘いタックル・ターンオーバー。 攻めに転じた相手の防御態勢が整わないうちに、飛ばしパスで大きく展開。 ラックから素早く逆に大きく振って一気にゴールへ。 スピーディーに狙いどおりボールが動いて、よどみない連続攻撃。 サントリーが目指した攻撃の完成度を示した。 ＦＬスミス、デュプレア、ＣＴＢニコラス、そしてデュプレアと入れ替わるＳＯピシ。 ４人の世界トップクラスの外国出身者が要所をリードしたとはいえ、素早く確実にボールを供給したＦＷの結束力や思い切って抜いて出るバックスの意欲が光った。 日本人競技者の成長が圧勝街道に導いたと言えるだろう。 大久保監督は「まだ課題はたくさんある」と勝利を決めた後の防御の緩みなどに不満を見せたが、昨シーズンを上回るスピードとパワーは確かだった。 群を抜く決定力を持つスーパースターがいなくとも、結束した集団のスピーディーなつなぎと豊かな運動量で圧倒する攻撃法は日本ラグビーが求めていたものだが、サントリーが一つの答えを出した。 サントリーを育てたエディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチは新しい代表の目標を「スモールラグビー」と表現したが、短くつないで抜いて出て、連続して大きくボールを動かすということなら、サントリーがヒントを示している。 狭いスペースを抜いて出る能力は日本人の持つ俊敏性の特徴の一つであり、伝統的に鍛えられてきたものの、体力的に連続するのがむずかしかった。 それが抜いて出ながら、つなぎミスを生むことにつながった。 これからは、瞬発力を継続できる体力を身につけるという新しい課題に取り組むことになりそうだ。 肉体的な能力向上にとどまらず、判断や知恵といった瞬時の思考力アップも求められる。 むしろ、知的鍛錬が重要なように思われる。 日本協会は、６年後のワールドカップ開催へ向け「日本代表戦略室」を創設し、若手の強化に本格的に乗り出すようだが、大学や高校の強化では知的鍛錬を、より重視する必要があるだろう。 ２０１２年度は、大学や高校でもトップを目指すには競技者の自主性を開花させることが不可欠なことを示したシーズンだった。 史上初の４連覇を達成した帝京大は、全国大学選手権決勝で思い切った展開勝負に出て総合力を存分に発揮した。 １７年ぶりの王座に復帰した常翔学園も展開連続攻撃で決勝トライをもぎ取った。 いずれも競技者たちが自らの力を信じて爆発させた結果だった。 自主性を開花させ、判断や工夫を磨き込むことで、さらに楽しく勝てるチームに育つだろう。 知恵と工夫の競い合いは、観衆にラグビーの魅力を再認識させるはずだ。 一つ一つの練習の意味を考えながら全力をあげて鍛え上げることこそ、職人魂を誇る本質的な日本人的スタイルだと思う。 知的鍛錬が、世界に飛躍する日本ラグビーの新境地を切り開くに違いない。 ２０１３年３月１５日記 |
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