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大野晃のラグビー通信 |
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号外１５２ ２０１２年１０月１９日 |
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※月刊誌ラグビーマガジンに連載中のコラム「楕円球界定点観測」から、２０１２年１２月号（２０１２年１０月２０日すぎ発売）に掲載する原稿を転載致します。 大野 晃 |
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◇突破口と粘りの防御で明暗◇
トップリーグは第６節を終わって、２連覇目指すサントリーが６連勝で首位を走っている。 ２位はトヨタ自動車と引き分けただけで無敗の神戸製鋼。 ３位はトヨタ自動車に敗れて１敗の東芝で、４位が東芝とＮＴＴコムに敗れて２敗のパナソニック。 序盤戦で、いくつかの波乱はあったものの、３強と神戸製鋼がベスト４を占めた。 ５位ヤマハ発動機と６位ＮＴＴコムの健闘が光ったが、８位につけているトヨタ自動車がベスト４の２チームと１勝１分けで底力を発揮しており、王座争いを面白くしている。 ７位の近鉄は安定してきたし、１０位のリコーは上り調子で、ＮＥＣが伸び悩んで１１位に後退したが、初昇格のキャノンが９位に食い込み、ベスト８争いも激しい。 １０年目のトップリーグ前半戦の特徴は、全体として防御力、展開力が高まる中で、展開の突破口を作り出せたか、粘りの防御を徹底できたかが、明暗を分けている。 密集からの速い球出しで展開しながら、縦突進で突破してトライに結びつけようと各チームが努力しており、動きの激しい競り合いが続いている。 しかし、ボールを動かす意識はあっても、相手防御のスキを作り出して突き破る工夫が見えない。 勢い、局面を一瞬にして変えられるだけの個人能力や判断力に富んだプレーヤーを擁しているチームが上位を占めているようだ。 サントリーは、強力なＦＷが攻撃的な速い展開を支えているが、やはりスミスのリードが大きい。 デュプレアがテンポアップを促し、ニコラスが突破口になって、攻撃の多彩さを生んでいる。 粘りの防御に課題は残るが、簡単には崩れない。 神戸製鋼は、フーリーが突破口になって展開攻撃に威力を増した。 激しい縦突進を受けるとＦＷのパワー不足は否めないが、相手ミスを突く逆襲力がある。 東芝は、持ち前の、結束して激しく縦に突破する力強さを発揮しだした。 バックス展開では強力な突破口を見出せないが、ＦＷ第３列が補う。 ＦＷが自在に動けないと苦しい。 パナソニックは、ウィリアムズが素早く力強い突破力と的確な判断でリードし、バックス展開の決定力を高めた。 山田のトライ量産を導いている。 しかし、不安定なラインアウトなどセットプレーの課題が克服し切れず、ＦＷの奮闘にかかる。 強力ＦＷのトヨタ自動車が防御力を高めて、着実で粘り強くよみがえってきた。 展開の決定力が課題だ。 ヤマハ発動機やＮＴＴコム、近鉄は総合力を高め、ベスト４と互角の争いを展開するが、突き抜ける攻撃力に不足がある。 序盤に負け続けたリコーが意欲的に前に出るようになって攻撃リズムをつかみ、上昇に転じた。 オリフィエが積極的にリードしている。 ＮＥＣはナドロの突進頼りで、粘りの防御が崩れ、競り合いに弱くなってしまった。 サニックス、九州電力、ＮＴＴドコモは、防御の弱さで、勝利のきっかけをつかめない。 全体として、スピード豊かな攻防が増えたが、セットプレーに安定感を欠き、展開の判断が弱いことが気がかりだ。 攻防の形は整ってきたが、型破りな攻撃は有力外国出身者の個人能力に頼り切っているように見える。 戦術キックの使い方に工夫が足りない。 しかも精度が低い。 カウンター攻撃のスリルも少ない。 チームスタイルの特色が薄らいでいる。 激しいが単調な攻防に映る。 新しい日本ラグビーの攻撃法を作り出す努力が不足してはいまいか。 上位と下位の実力接近を反映して、スピーディーな好ゲームや接戦が多いのだが、１万人を超えた試合は東芝・パナソニックの１試合だけ。 観客動員は苦戦が続く。 各チームでファンとの一体感を強める、さらなる努力が必要だろう。 同時に日本協会には、本腰を入れた観客動員の様々な工夫が求められる。 ２０１２年１０月１６日記 |
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