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大野晃のラグビー通信 |
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号外１４８ ２０１２年６月２０日 |
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※月刊誌ラグビーマガジンに連載中のコラム「楕円球界定点観測」から、２０１２年８月号（２０１２年６月２０日すぎ発売）に掲載する原稿を転載致します。 大野 晃 |
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◇厳しいテストマッチの洗礼◇
アジア５カ国対抗で５連覇を達成した日本代表だったが、パシフィック４カ国対抗では、実力接近の厳しいテストマッチの洗礼を受けることになった。 シビアな国際試合の経験が少ない若い代表たちには良薬になったには違いないだろうが、代表強化の課題の大きさを改めて示した。 新生日本代表は、対フィジー戦でアジア相手では想像できない激しい当たりの突進の連続を初めて、まともに受けた。 踏み込みの弱い腰高のタックルでは抑えようがなく、倒してもラックの結束が遅れ、ボール奪取戦で後手に回ると多くの人数が必要になり、球出しにも時間がかかって速い展開のテンポが高まらずリズムを作り出せない。 しかも相手防御の当たりが激しく、ハンドリングミスが多発して判断も乱れがちになり連続展開攻撃は不発に終わった。 前半３連続ＰＧでリードし、先手必勝の試合運びだったが、パワーでターンオーバーされて流れを変えられた。 受け身に立たされて防御が甘くなり２トライを浴びた。 さらに後半もトライを加えられて突き放される悪いパターンで、モールを押し込んで１トライを返すのがやっとだった。 日本代表が奪われた３トライは第一次防御の弱さが原因だった。 ６点差の惜敗には違いなかったが、激しく押し込まれると建て直しのできない試合運びのまずさと攻防のもろさを露呈してしまった。 続く対トンガ戦でも、前半モールを押し込んで先制トライしながらスクラムサイドの防御の甘さで一気の逆襲トライを奪われ、あっさり流れを変えられて、追う展開になった。 後半早々にＰＧを狙ってポストに当たってはね返ったボールを奪ったトライなどで同点に追いつき、ゴール前に攻め込んで縦突進を繰り返したが、ミスしてトライできなかった。 しかも、その直後に、トンガ代表はキック・カウンター攻撃から当たり強くラックを支配しながらスピーディーな連続展開、突進で決定的なトライを奪った。 日本代表のお手本となる連続攻撃だった。 日本代表が奪われた前半の２トライは、ＦＷ第３列、ＨＢ、第１ＣＴＢの防御の甘さがピンチを広げたものだった。 この試合も４点差の惜敗だったが、試合の流れを引き寄せる一気の集中や勝負どころのしぶとさなどでトンガ代表との差は大きかった。 フィジー、トンガともに第７回ワールドカップ経験者がリードしていたとはいえ、新人を多く含む新編成の代表で、十分に仕上がっているわけではない。 スピード展開の新生日本代表との力の差はほとんどない。 それだけに、攻防の基本の徹底や勝負どころの集中のちょっとした差が勝敗をわける。 それがテストマッチのこわさ、厳しさなのだが、その点で日本代表が劣っていることを示した。 日本代表が目標とする世界ベスト１０入りのライバルは甘くない。 日本代表は、攻防の要であるＦＷ第３列、ＨＢ、第１ＣＴＢの飛躍的な個人能力アップを期待するしかないだろう。 とりわけ防御力アップが急務である。 速い展開の攻撃重視とはいえ、確実な攻撃的防御の徹底こそが連続攻撃に勢いを与える。 とりわけ、バックスは１対１で負けない強さがなければ大きな弱点になる。 攻撃のスピードがあっても、密集の軸になる強さがなければ連続攻撃は不可能だし、激しいタックルがなければ逆襲できない。 なかでもＨＢ、第１ＣＴＢには、それが強く求められる。 ＦＷ第３列も、突進力だけでなく、豊かな運動量による防御力が高くなければボール奪取戦を優位に争えない。 世界トップに共通した現代ラグビーの最重要ポジションと言えるだろう。 カーワン・ジャパンでは、このポジションを外国出身者に多くを頼った。 しかしジョーンズ・ジャパンが日本人の特性を生かすことを目指すなら、日本人競技者の成長が不可欠である。 トップリーグなどで、じっくりとたくましく鍛え込むことが期待される。 同時に高校や大学で有望な人材が輩出することが望まれる。 ２０１２年６月１３日記 |
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