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大野晃のラグビー通信 |
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号外１４７ ２０１２年５月２０日 |
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※月刊誌ラグビーマガジンに連載中のコラム「楕円球界定点観測」から、２０１２年７月号（２０１２年５月２０日すぎ発売）に掲載する原稿を転載致します。 大野 晃 |
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◇トップリーグ賭博化の動き◇
国会のスポーツ議員連盟（会長・麻生太郎元首相）が「ラグビーくじ」の導入を検討するという。 公営ギャンブルであるサッカーくじの対象競技を拡大して、ラグビーのトップリーグを対象にした公営賭博くじを創設するもくろみのようだ。 森・日本ラグビー協会長が日本体育協会など他の４団体会長と連名で、同議連にサッカーくじの他競技への対象拡大の要望書を提出したことを受けた形での急展開である。 同議連をリードする森会長が、トップリーグの賭博化に積極的に動いているようだ。 サッカーくじの「ＢＩＧ」のように、コンピューターによる、くじにすぎないから、競技者が八百長などに巻き込まれることはないと主張したとしても、賭博であることには変わりがない。 収益の一部は東京・国立競技場改修などのスポーツ振興の助成金になるとされても、賭博で競技の資金を稼ぐことには違いない。 ５６年前の１９５６年６月に日本ラグビー協会は、６４年東京五輪招致を決めた日本体育協会（日体協）が５６年メルボルン五輪へ大選手団を派遣するために公営ギャンブルである競輪からの寄付を求めたことに抗議して、日体協を脱退した。 国会が認めようと、公営であろうと、賭博からの援助は受けるべきではないというアマチュア競技団体の理想を貫いた対応だった。 おかげで国民体育大会から排除され、地方の不満が広がったこともあり１年で日体協に復帰したが、ラガーメンの主張は国民の大きな反響を呼んだ。 そのラグビーが自ら公営ギャンブル化を目指すとあっては、国民の驚きはとてつもなく大きいだろう。 アマチュアリズムを捨てた日本ラグビーは、ついに世界に例をみない公営賭博にまで踏み出すのかと。 賭博の対象から競技を解放し、近代スポーツを生み出した人類の歴史がある。 スポーツを人類の文化に育てる出発点だった。 近代スポーツの中心にあったラグビーは、純粋に競技を楽しむことを理想として世界スポーツをリードしてきた。 しかし、日本だけは、世界に反する道を進むのか。 トップリーグの性格を変える重大問題だけに、すべての日本ラガーメンによる検討が必要だろう。 森会長の独走は許されまい。 ラグビーに真剣に取り組んでいる少年たちがあこがれるトップリーグが賭博の手段になってしまうのだ。 理想に誇りと情熱をかける指導者たちの動揺は大きいだろう。 理想を追求することがサッカーとは違ったラグビーの魅力と確信し、純粋さを求めてきた競技者や指導者が少なくないはずだ。 多くのファンも同じで、裏切られた気分で、遠のく可能性もある。 サッカーＪリーグとは異なり、企業社員の求心力としているトップリーグ・チームも多いから、賭博化でリーグを拒否するところが出てくるかもしれない。 若手中心のジョーンズ・ジャパンはアジアで快進撃を続けた。 ミスは少なくないにせよ、攻撃的に脱皮して、生き生きと闘っているようだ。 韓国戦はやや苦戦したが、立ち直りも速い。 アジア５カ国対抗といっても相手はクラブチーム所属の代表ばかりだから、組織的な攻防が弱く、組織化を強め、ＦＷ力が高い日本代表が大勝しても不思議はない。 若手が多いといっても今年の欧州６カ国対抗で全勝優勝したウェールズをはじめ世界トップの代表の若返りは急で、同じ世代がリードしている。 ようやく日本も同じ地点に立ったというところだ。 しかし、代表の多くが所属するトップリーグの賭博化は若い代表たちにも衝撃だろう。 ７年後のワールドカップ開催へ向けて財源確保に悩んだとしても、そのために最も大切なラグビーの理想をかなぐり捨てては元も子もない。 歴史と伝統を重んじるラガーメンの誇りと勇気と熱意は、安易な政治的悪用を許さないだろう。 ２０１２年５月１６日記 |
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