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大野晃のラグビー通信 |
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号外１４４ ２０１２年２月２０日 |
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※月刊誌ラグビーマガジンに連載中のコラム「楕円球界定点観測」から、２０１２年４月号（２０１２年２月２０日すぎ発売）に掲載する原稿を転載致します。 大野 晃 |
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◇精神的タフさ競う３強再戦◇ トップリーグの３強争いは最終盤を迎えた。 リーグ戦はサントリーが初の１位となったが、最終節を見る限り、最も勢いのあるのは東芝だ。 東芝はサントリー、パナソニックを撃破しての２位、サントリーは開幕戦でパナソニックに勝っての１位であり、開幕戦と最終戦で両者に敗れたパナソニックが３位の結果だった。 しかし、実力は横一線と思われる。 闘い方の意思の徹底や闘いに臨む気構えの、ちょっとした差が順位に表れたにすぎないようだ。 それだけにプレーオフや日本選手権での再戦は、精神的タフさを競う激戦となるだろう。 サントリーは、開幕戦でトライをたたみかける攻撃的スタイルを飛躍させながら、最後まで徹底できない精神的な危うさをうかがわせた。 それがそのままリーグ戦に流れて、群を抜く高い戦力で勝ち続けながらも危うく敗れそうな試合が少なくなかった。 大一番の東芝との争いでガマン比べに耐えられず、防御ミスで敗れたのが象徴的だった。 最終戦の神戸製鋼戦でも、最後に底力で勝ち抜いたとはいえ、相手に合わせてしまう弱さを見せた。 スピード、パワーともに圧倒的な攻撃力と堅い防御力を誇るが、ミスで勢いがそがれるともろさが出る。 その弱点が克服できれば無敵の強さには違いない。 東芝は、２０１１年末に２連敗して実力ダウンを感じさせたが、１２年に入って迷いを振り切った一徹の強さをよみがえらせた。 結束して前へ前へと攻め立てる迫力は最後まで消えることがなく、サントリーを面食らわせた。 最終戦ではパナソニックに戦意が感じられず、拍子抜けしたようだったが、勢いはとどまらなかった。 攻撃は最大の防御を体現して失点が少ないのが特徴で、最もチーム意思が徹底していた。 パナソニックは、最終戦で、プレーオフでの再戦への手の内隠しのような闘いぶりを示し、前回王者の誇りを見失ったかと思わせた。 東芝の激しい当たりを受けるばかりで、かわそうとするプレーがほとんどだった。 前南アフリカ代表のフーリーが豊かな個人能力を発揮したとはいえ、ファンの期待を集める大一番に臨む気構えに疑問を感じた。 小細工がすぎては王座にはふさわしくない。 心のスキは尾を引く恐れもある。 ４位で初めてプレーオフに進んだＮＥＣにも同じ不安を覚えた。 ベスト４に復活しながら最終盤で持ち味が鈍ったのはどうしたことか。 近鉄が５位、神戸製鋼が６位、リコーが７位で、名門が３強を追う位置に戻ってきたが、３強との力には開きがあった。 プロ契約廃止という厳しい条件下で攻撃的に８位に浮上したヤマハ発動機の健闘が光り、ＮＴＴコムが９位に上がってベスト８にあと一歩と迫った。 一方で、ベスト４常連だったトヨタ自動車が防御の出遅れから立ち直れないまま１０位に沈んだ。 サニックスは１１位に踏ん張ったが、コカコーラ西は１勝しかできない最下位と九州勢の不振が顕著だった。 すべてのチームが有力外国出身者のリードで競り合いでの勝負強さを追求するようにはなったが、戦力を整えること以上に、１３戦を闘い抜く戦意の継続という点で問題はなかったか。 第７節あたりから順位が固定し、後半戦はほとんど変わらずに推移したが、闘う意思の中だるみが変化を生まなかったのではないか。 それが観客減につながってはいまいか。 さらに、３強と、４位から８位まで、９位から１１位、そして１２位以下の４段階の差が顕著になった。 有力外国人出身者が増えたのが今季の特徴だったが、上位と下位の力の差が開いて、多くのチームが拮抗した戦力で王座争いの接戦を続けるリーグの魅力が薄れては元も子もない。 有力外国出身者の高いレベルのプレーが楽しめるだけでは、ファン離れが進むことになりかねない。 しかも日本代表の底上げにはつながらない。 上下の差を少なくして、リーグ全体の活性化をはかるため、関係者の知恵と工夫が求められる。 ２０１２年２月１６日記 |
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