ラグビー通信第５４号

　　　大野晃のラグビー通信

　　　　　　　　　　　　第１４７号　　２０１１年１０月８日

　　　　　　　　第７回ワールドカップ特集１０

◇意志貫徹で勝負強い欧州勢◇

ニュージーランド（ＮＺ）で開催されているラグビーの第７回ワールドカップ（Ｗ杯）は８日、決勝トーナメントが幕を開け、準々決勝２試合が行われた。

注目の一次リーグＢ組１位のイングランドと同Ａ組２位のフランスのオークランドでの対戦は、フランスが、華やかさを捨てた勝つためのチーム意志の貫徹で、イングランドの攻め手をしばり、１９―１２で快勝した。

また、一次リーグＣ組１位のアイルランドと同Ｄ組２位のウェールズのウェリントンでの対戦も、ウェールズが先手必勝のお手本を見せて、２２―１０で快勝。

一次リーグ２位がそろって、１位を倒す波乱のスタートとなった。

一次リーグで展開ミス多発だったフランスが、出足鋭く前に出る攻防と素早いＦＷの結束でイングランドをミス多発に追いやり、勝負強い試合運びで快勝した。

フランスは、今春の欧州６カ国対抗で、ノートライに抑え込まれて９―１７で敗れた雪辱を果たし、５回連続６回目のベスト４進出だった。

前半立ち上がりこそイングランドが大きな展開を仕掛けたが、フランスの速い防御にミス続出。

フランスは、本来ＳＨのパラがＳＯに定着し、ヤシュヴィリと２人ＳＨの態勢。

バックスの布陣に悩んだ結論が、熟練のＦＷ力を生かして、リスクをともなう大きなバックス展開より、確実なつなぎにかける作戦に出た。

２人が、密集からハイパントでバックスをまずラッシュさせ、ＦＷが速い結束で加わって密集を支配し、イングランドの速い展開を阻止。

ＦＷの結束パワーで押し込んで、バックスが短いパスをつないで、イングランド防御のスキを突いた。

イングランド・バックスの突破口であるサモア出身の新鋭ＣＴＢトゥイランギの突進に２人がかりのタックルを徹底し、ハイパントでイングランドを後退させながら、ヤシュヴィリが１１分と１６分に４５㍍のＰＧを計２本決めてリードした。

１７分には４８㍍のＰＧも狙う。

観衆からの、展開せよとのブーイングを受けてもお構いなし。

失敗したが、勝つために相手にハンデを負わせる加点主義である。

これがイングランドの重荷となり、好タックルを受けて展開攻撃がままならないこともあって、焦りをもたらした。

フランスは、２２分に、イングランドが投げ入れたラインアウトのボールを奪って短い展開。

パラの短いループからＣＴＢメルモズが短く速くつないで、ＷＴＢクレールがイングランドのタックルミスをかわして先制トライした。

堅守を誇っていたイングランドに防御ミスが飛び出して、攻防のもたつきがミス多発につながった。

３１分にはラインアウトからモールを押し込み、ＦＬデュソトワール主将が割って出て、ラックからの縦突進を繰り返しながら、ＣＴＢルージュリーが押し込み、パラの飛ばしパスでＷＴＢパリソンが突破。

内についたＦＢメダールがトライを加えた。

前半を、フランスが１６―０と圧倒する予想外の展開。

フランスは１次リーグの苦戦から、しっかり修正し、短いが確実な左右の揺さぶりでつないで、ＦＷが押して出る形に変えた。

シャンパンより、渋みのあるワインの選択だ。

一方、イングランドは、ウィルキンソンとフラッドの２人のＳＯを、ＳＯと第１ＣＴＢに並べた布陣で、キックでの優位を目論んだが、フランスの術中にはまって手も足も出ない。

フラッドがＤＧミスするなど攻撃に一貫性がなく、チーム意志が感じられない。

後半も、イングランドはＰＧを捨てて、ＰＫタッチキックのラインアウトからのＦＷ突進で流れを変えようとするが、フランスの低いタックルに、つなぎ切れず、なかなか実らない。

ようやく１５分にＰＫタッチキックのラインアウトから展開し、縦突進の連続で揺さぶりながら、ＦＢフォーデンがトライし、ウィルキンソンがゴール。

９点差に迫ったが、３３分にフランスはゴール前ラックからのＦＷ突進を連続しながら、交代したＳＯトラン・デュックが見事にＤＧを決めた。

イングランドが得意としていた名キッカーのウィルキンソンがいればこそのプレーのお株を奪う攻撃策を成功させた。

イングランドは、３７分にＰＫ速攻からＷＴＢクエト―がトライしたが遅すぎた。

勝負強いフランスに対し、あまりにも正攻法すぎたイングランドは、ＦＷ優位を過信したのではないか。

名門らしからぬ、つたない試合運びでトリコロールに飲み込まれた結果だった。

ウェリントンでは、ウェールズが前半開始早々の３分に、ゴール前ラックからの連続展開でＷＴＢのエースＳＨ・ウィリアムズがトライし、新鋭ＳＯプリーストランドのゴールなどで前半を１０―３とリード。

後半早々にアイルランドにトライされ、いったんは同点とされたが、勢いに乗って２トライを奪い、先手必勝のお手本を見せる快勝。

ウェールズは３位となった第１回以来、６大会ぶり２回目のベスト４進出だった。

ＦＷ力を過信したアイルランドは、先手先手と攻められて、流れを変えられなかった。

準決勝は、欧州のしぶとい曲者同士の対戦となり、さらに興味をかき立てる。