|
大野晃のラグビー通信 |
|
第１４２号 ２０１１年９月２１日 |
|
第７回ワールドカップ特集５ |
|
◇またミスから自滅の長い病◇ ラグビーの第７回ワールドカップ（Ｗ杯）は９月２１日、ニュージーランドのファンガレイ市にあるノースランド・イベンツ・センター競技場で日本が第３戦の対トンガ戦に挑んだ。 北島北部の山が迫る海辺の工場地帯であり、リゾート地に、広々とした芝生席がある昔懐かしい競技場で、昼間の暖かさがうそのような肌寒さの午後７時３０分（日本時間午後４時３０分）に試合は始まった。 日本代表は、ベストの布陣で必勝を期した。 トンガには、今年の太平洋４カ国対抗で１点差勝利しているが、その時は若手中心の相手だった。 Ｗ杯には、欧州クラブに所属する主力が出場し、地力は飛躍的に上昇している。 日本が、太平洋の対抗戦で５連勝しているが、いつも若手が主体で、ベストの相手と争ったことはない。 そこに落とし穴があった。 前回ベスト１２に躍進したトンガは、欧州クラブ所属の主力がリードして、パワーあふれるプレーで日本を圧倒した。 しかも日本は、ミスから自滅する伝統的な負けパターンでトンガを 勢いづけてしまった。 前半開始のキックオフされたボールを自陣ゴール前で取って、何を思ったかオープンパス展開。 これをＮＯ８菊谷主将がハンドリングミスして、トンガ得意のゴール前スクラムにしてしまった。 開幕戦でオールブラックスを苦しめた重圧が日本ＦＷにのしかかり、２度のテレビ判定の末、７分にトンガＦＷのサイド突進からの先制トライが認められた。 日本が献上したに等しかった。 １４分にラインアウトのモールを押し込んで、テレビ判定の結果、ＰＲ畠山のトライが認められ、同点。 しかし、その直後の１５分。 キックオフされたボールを手にしながら、ラックでトンガＦＷにボールを奪い取られ、つながれて、これまたトライを献上した形だった。 ゴールも決められ、この７点差が重かった。 攻撃ミスから相手の得意の攻めを引き出すようでは、お人好しも極まれり、である。 試合下手が痛々しい日本だった。 攻めながらボールを落とし、逆襲される日本。 トンガもパスミス、ハンドリングミスは多いのだが、スクラムを押し上げながら押して優位に立ち、ミスをこわがらない。 逆に日本は厳しい消耗戦が待っている。 それでも２６分にＣＴＢニコラスの突破から、ＦＢウェブが抜いて、ＦＬリーチがトライした。 バックスが横に素早く振れば、トンガの甘い防御は崩せる。 アレジがゴールをミスして同点には追いつかなかった。 ゴールキックミスも日本には重い。 ３０分にはキックオフ後のラックで反則し、トンガＳＯのＫ・モラスのＰＧを許した。 ＫＯを受けた直後に、３度にわたり得点された日本。 これほどの試合展開の甘さはない。 １３―１８と５点差リードされて後半に入った日本。 真の地力のあるチームなら後半開始早々に、同点か逆転が可能のはずだ。 しかしラックを抑え込まれ、速い球出しができないから、日本の大きな展開はできず、縦突進が中心となる。 トンガの待ってましたの試合ペースである。 ＰＧで加点したトンガは１４分に、縦突進を連続しながら、短く振って、巨漢ＷＴＢヴァイニコロがトライし、Ｋ・モラスが好ゴール。 ２８―１３の１５点差をつけ、トンガの勝利が見えた。 ラフなプレーの多いトンガがシンビンで１人少ない１４人の２３分、日本がスクラムからサインプレーの展開で、ＳＯアレジの反対側の内に好ダッシュして入ったＣＴＢトゥプアイレイがトライした。 だが、トンガは２８分にもＰＧを決め、余裕の勝利だった。 日本は、バックス展開のスピードトライを奪ったのだから、横に弱いトンガの甘い防御を考えたら、もっと意欲的に大きく展開すべきだった。 しかし縦突進を連続して突破をはかり、結果的にトンガの戦法に引きずり込まれた。 しかもミスが消えなかったのだから、逆転しようもなかった。 「激突面で負けた」とカーワン・ヘッドコーチは「２勝の夢」が幻となったことを悔やんだ。 しかし、マイペースの試合展開ができないうえ、相手ペースに手を貸すミス多発だった。 日本ラグビーの長い病に処方せんはないのか。 ファンガレイにて ２０１１年９月２１日記 |
|
|
