６月２９日から９月７日まで行なわれていた第５回ワールドカップ（Ｗ杯）アメリカ（米州）地区最終予選は、波乱の連続で、１位のカナダと２位のウルグアイが本大会出場権を獲得した。

　２回連続４回目の出場目指す米国は３位となって世界敗者復活戦に回り、欧州地区最終予選（９月２１日―１０月１２日）３位とアフリカ地区最終予選（９月２８日―１０月１２日）２位の３者で代表権を争う。

　米州地区最終予選は、それまでの予選を勝ち抜いたチリが、前回の出場実績でシードされたカナダ、米国、ウルグアイに挑戦する形で、４カ国のホーム・アンド・アウェーによる２回戦総当りで争われた。

　実力ナンバー１のカナダが米国に２連勝し、米国はウルグアイ、チリを破って前半を終了。チリがウルグアイに勝ち、波乱の芽もあった。

　ところが、８月中旬からの後半は予想外の展開となった。

　まず８月２４日、地元モンテビデオにカナダを迎えたウルグアイが、好キッカーのＦＢメンチャカ、ＣＴＢのＤ・アギ―レ主将らの活躍で、激しいシーソーゲームの末、　２５―２３の２点差で勝利した。

　ウルグアイは、公式テストマッチ６戦目での歴史的初勝利で、対カナダ通算成績を１勝５敗とした。

　前半は、ウルグアイがＰＧ合戦を６―３とリードした後、カナダのオープン攻撃が決まり、ＷＴＢアスリンがトライし、ＳＯバーカーのゴールで、カナダが１０―６と逆転。さらにカナダはバーカーの２ＰＧで１６―６と突き放した。

　しかしウルグアイは，メンチャカの２つ目のＰＧで食い下がり、カナダのＳＨフェアハーストがシンビンで退場すると、Ｄ・アギ―レがＰＧして、カナダが１６―１２のリードで前半を折り返した。

　後半早々にメンチャカの３つ目のＰＧで１点差に迫ったウルグアイは、ラインアウトモールを押し込み、ロックのカポーが再逆転トライし２０―１６。

　しかし、カナダはＦＢスタンリーが抜いて、戦列復帰したフェアハーストが再々逆転トライを決め、バーカーのゴールで、２３―２０と引っくり返した。

　ところが、交代プロップのカチャックがシンビンで，カナダはまたも１４人。３２分にウルグアイは再びラインアウトモールを押し込んで交代フランカーのベルッティが再々々逆転の決勝トライして、押し切った。

　ウルグアイは、ＦＷがカナダの強力ＦＷと互角に争う健闘を見せ、カナダの勝負どころでのシンビン連発を突いて着実に得点する上手い試合運びを見せた。

　波乱はさらに、同時的に起こった。

　同日、地元サンチアゴに米国を迎えたチリがこれまた歴史的初勝利。２１―１３で米国を降し、公式通算対戦成績を１勝１敗とした。

　チリは前半、米国のＳＯハーカスが２ＰＧミスしたのとは対照的にＳＯオネットが２ＰＧし、６―０のリード。後半はラインアウトからの展開でＣＴＢのＳ・ピザッロがトライし、オネットのゴールで１３―０とリードを広げた。さらにオネットがＰＧを加え１６―０。

　追う米国はようやくハーカスがＰＧを決め、ＣＴＢケイターがトライし、ハーカスのゴールで１６―１０と迫った。

　ところがチリは、３０分に逆転を狙った米国のカウンター攻撃を、オネットがインタセプトして独走トライし２１―１０と突き放した。米国はハーストがＰＧを加えるにとどまり、チリの先手必勝が鮮やかだった。

　８月３１日にサンチアゴに乗り込んだカナダは、チリを２９―１１で実力どおり降して本大会出場を決めたが、米国の乱れは続いた。

　同日、ウルグアイの地元モンテビデオでの争いは、ウルグアイが前半、米国ゴール前スクラムで認定トライをもぎ取り、メンチャカのゴールで７―０と先制。

　米国はハーカスの２ＰＧで７―６と迫って前半を終わったが、後半、ウルグアイはＤ・アギ―レのＰＧで１０―６のリード。

　３０分に米国が逆転トライを決めたかに見えたが、抑え切れず、ハーカスのＰＧにとどまり１０―９。再び１点差に迫りながらも米国は決め手を欠いた。

　よく守ったウルグアイはわずか１点差だが１０―９で、またまた公式テスト６戦目の歴史的初勝利。通算対戦成績を１勝５敗とした。

　これで勢いに乗ったウルグアイは９月７日、地元モンテビデオでの最終戦で、チリを３４―２３で降し、本大会出場を決めた。

　ウルグアイは、前半にＷＴＢコルドソがトライし、メンチャカが１ゴールと４ＤＧ、３ＰＧの大活躍で、チリをＳＯのＣ・ゴンザレスの２ＰＧだけに抑え、２８―６の大量リード。

　後半に強力ＦＷのチリがラインアウトモールを押し込んで３連続トライ、１ゴールで２８―２３にまで追い上げたが、ウルグアイはメンチャカがさらに２ＰＧして突き放した。

　ウルグアイは地元モンテビデオで３連勝し、形勢逆転の上位進出だった。

　これで最終予選の最終成績は１位が５勝１敗のカナダ、２位が３勝３敗のウルグアイと決まり、米国とチリは２勝４敗で並んだものの、総得失点差で米国が上回り、３位が米国、４位チリとなった。

　カナダは５回連続５回目のＷ杯出場で、一次リーグＤ組に入り、ニュージーランド、ウェールズなどと対戦する。

　ウルグアイは前回、世界敗者復活戦でポルトガルに２連勝し、モロッコとは１勝１敗だったものの総得失点差で上回って初出場。一次リーグでスペインを破り、Ｗ杯初勝利をあげている。今回は、一次リーグＣ組で、南アフリカ、イングランド、サモアなどとの争いだ。

　ウルグアイの躍進、チリの善戦は、世界ベスト８の実力派アルゼンチンのリードで、米州地区でも南半球勢の伸張ぶりを示した。

　不振の米国は、世界敗者復活戦での巻き返しを期すが、これを勝ち抜いて本大会出場を果たすと、一次リーグＢ組で日本と対戦することになる。日程は未定だが、世界敗者復活戦も目が離せない。