第５４回全国社会人大会は、６年ぶり２回目の王座狙うサントリー（東日本１位）と３年連続１０回目の優勝目指す神戸製鋼（関西１位）による東西王者同士の決戦となった。東西決戦は３年ぶり２２回目のこと。

　サントリーは３年ぶり５回目の決勝進出で、神戸製鋼は３年連続１２回目の進出である。両者が決勝で顔を合わせるのは１２年ぶり２回目。１月１３日に東大阪市・花園ラグビー場で雌雄を決する。

　全国社会人大会を通じて、過去８回対戦し、神戸製鋼が負けなしの５勝３分けと分がいい。前回は準決勝で対戦し、神戸製鋼が４１―３８で勝って優勝したが、第３８回日本選手権の決勝で再び対戦し、２７―２７で史上初の引き分け両者優勝となった。

　因縁の争いであり、サントリーは是が非でも初勝利を飾りたいところだ。

　１月６日の準決勝では、対照的な試合ぶりだった。

　東京・秩父宮ラグビー場で、クボタ（東日本３位）と争ったサントリーは、立ち上がりから積極的な連続攻撃を仕掛け、５分にＷＴＢ栗原が初トライした後、ほぼ５分に１回のトライラッシュで前半８トライの５０点。

　後半も勢いは緩まず、インジュリータイムまで手を抜かない８トライの５４点。２トライを許したものの、計１６トライを奪い、１０４―１２の１００点ゲームで大勝した。

　ＦＷ、バックス一体の連続攻撃が、結束の良い強力ラックからの速いつなぎでハイテンポなリズムに乗り、エンジン全開の爆発だった。

　一方、花園ラグビー場で、トヨタ自動車（関西３位）の挑戦を受けた神戸製鋼は、大苦戦。

　立ち上がりに２連続トライを奪われて、前半を１４―２１とリードされ、後半２トライして２８―２７と逆転したものの、その後は決め手を欠き、逆転に次ぐ逆転のＰＧ合戦。

　インジュリータイムの残りワンプレーで、ようやく決着の逆転ＰＧに成功し、３４―３３の１点差でかろうじて勝ちを握った。

　トヨタ自動車がモールを押し込みながら、サイドを突いて、前半５分までに２トライを奪った。ハンデを負った神戸製鋼は、縦を突く速い連続攻撃で２トライを返して同点としたが、トヨタ自動車の強力ＦＷにボールを奪われ、前半のリードを許すトライを加えられた。

　それでも後半開始のキックオフボールをＷＴＢ増保主将が取って、一気のカウンター。ＳＯミラーが引きつけ、交代出場のＦＢ平尾に好パス。平尾が抜いて、ＷＴＢ大畑を走らせ、大畑は７０�bを独走してのノーホイッスルトライ。

　あっさり同点としたものの、なかなかトヨタ自動車の堅い守りを崩せない。トヨタ自動車はＳＯ廣瀬が２ＰＧを加えて、またもリードを奪った。

　しかし、神戸製鋼は、２７分にＰＫ速攻からＦＷがつなぎ、ＣＴＢ吉田がトライして逆転。２８―２７の１点差リードとなった。

　ところが残り１０分は、縦突破からの展開を狙う神戸製鋼と、ことごとくつぶすトヨタ自動車が、攻防のガマン比べを演じて膠着状態となり、ＰＧの取り合いに。

　先行するトヨタ自動車の廣瀬を神戸製鋼のミラーが追う展開で、インジュリータイムの４２分に「残り２分足らず」とレフリーに告げられた廣瀬が右隅の難しい角度からＰＧを決め、３３―３１とリードを奪い返して、勝負あったかに思わせた。

　しかし、あとワンプレーだけのキックオフで、ミラーが浅く蹴ったボールをトヨタＦＷが取り損ねるとロック小泉がセービングして神戸ボールに。

　交代出場のロック、アングレッシ―が中央へ突進したラックで、トヨタ自動車は痛恨のオフサイド。ミラーが決着のＰＧを決め、ノーサイドの笛が鳴った。

　神戸製鋼は、トヨタ自動車にパワープレーで先制されたうえ、神戸製鋼の攻撃パターンをよく読んで確実な防御を徹底したトヨタ自動車に対し、強引な縦突破にこだわって苦戦を招いた。

　ウェールズ協会から招いたトーマス・レフリーの厳しい笛に、ラインアウトのノットストレートを３度もとられるなど攻撃起点の安定も欠いていた。

　フアンをハラハラドキドキさせるスリリングなゲームだったとはいえ、神戸製鋼らしからぬ、下手な試合運びだった。

　決戦は、ＦＷ、バックスの別なく、タックル後のラック攻防に、明暗がかかるだろう。

　ともに、一気の結束、速い球出し、連続展開を狙う。サントリーはオープンに大きく振りながら、攻撃の速さで振り切るのを得意とする。神戸製鋼は、より確実な展開を目指して、縦突破を加えながら左右に振る。

　ラックへの踏み込み、セカンドヒットの強さ、素早い球さばき、そしてＳＯの展開判断が、勝負を左右する。

　セットプレーはともに安定してきた。密集の結束のパワー、ターンオーバーの強さは、サントリーが一枚上のようだが、展開判断はミラーが優れている。

　接戦は必至だが、ＦＷパワーに富むサントリーの優位は動かない。

　　　　　　　　　　　　　　　２００２年１月８日　　　大野　晃