大野晃のラグビー通信

 
      第23号  2001年7月9日

 
  ◇速い球出し、詰める防御で成果◇
 

 第6回パシフィック・リム選手権最終日の7月8日は、気温30度の暑い東京・秩父宮ラグビー場で決勝などが行なわれ、3位決定戦で日本は、カナダに39―7で完勝した。

 決勝は、フィジーが好タックルでサモアの突進を止め、28―17で快勝し、初優勝を飾った。

 向井ジャパン初年度の最後のテストマッチとあって、日本代表は、勝利への意欲が高く、開始早々から速攻ペースでカナダを受け身に立たせ、前半3分にNO8斎藤が先制トライするなど5トライを奪い、カナダを1トライに抑えて圧倒した。

 日本の対カナダ通算成績は、2年ぶりの勝利で8勝8敗1分けの五分となった。

 パシフィック・リム選手権3位は第3回以来のこと。第4回で初優勝したものの、昨年の第5回は全敗の最下位。第1回から3連覇したカナダを破っての3位浮上で、新生・向井ジャパンの面目を保った。

 カナダは、若手の成長に期待して、この大会へ臨んだ。FWの要であるNO8シャロンや、プロップのシール、ロックのテイト、フランカーのディクソンらが、大会決勝トーナメントに不参加。バックスも、軸のSOスチュワート、FBのスタンリーらが来日していない。

 要所の主力を欠いたヤング・カナダである。それだけに手堅い攻めを特徴としているものの、確実さを欠いていた。

 日本は、立ち上がりからラインアウトで相手ボールを奪ったり、スクラムを押し込んだりでマイペースの展開。

 3分にラインアウトから、CTB位置に構えていたNO8斎藤が勢いよく縦を突くと、カナダバックスのタックルは甘く、突き抜けた斎藤は30b独走してポスト下に先制トライ。WTB栗原のゴールで、あっさり7―0のリードを奪った。

 さらに、CTB元木も縦に抜いて出るなどカナダを受け身一方に押し込んだ。

 カナダの攻めは、展開してもCTB突進ばかりだから、前へ詰めながら外へ押し出す日本の組織防御が効いて、ハンドリングミスやパスミスが多く、突破できずに反則を繰り返す。すかさず日本は5分、12分に栗原が連続PGして、13―0。

 しかし、序盤のリードで気が緩んだのか、日本FWの結束が弱まり、動きが鈍った。20分にPK速攻から、カナダはFWのつなぎで日本の防御態勢を揺さぶり、日本の対応が遅れたラックサイドからNO8マーフィーがトライ(ゴール)を返し、6点差に迫った。

 これが、日本には良い刺激になったようだ。直後のキックオフからFWが結束を取り戻し、突進ラックからバックスを走らせゴール目前へ。23分にスクラムからのカナダのキックミスを奪って、つないだ斎藤が突進ラック。素早く振って、CTB難波がトライ(ゴール)を加えた。

 前へ出てのラックにセカンドヒットで押し込んでボールを残す、素早い球出しが連続攻撃のリズムを生んだ。前半で20―7の大量リード。

 後半も早々から連続攻撃で勢いづく日本。2分に前へ出てのラック連取で揺さぶり、WTB増保のキックで栗原がチェイスをかけるなど、変化もつけて、連続攻撃から、増保のパスで栗原がトライした。

 日本の防御に抑え込まれたカナダはキックを多用し始めたが、今度は日本の逆襲が有効に。

 19分にFB小野澤がキックカウンターで突進し、ラックから、交代出場のSH月田が素早いパスワークでバックスを走らせ、難波がカナダ防御の裏へ出て、栗原が2つ目のトライ(ゴール)。

 さらに37分にも、栗原のキックカウンターから、月田の速い球回しでラック連取からロックのバツベイがトライ(ゴール)して、カナダの反撃を絶ち切った。

 日本は、カナダの単調な攻撃に対し、フランカー伊藤らの確実なタックルでその芽をつみ、キックには意欲的な逆襲。

 カナダは、少人数ラックでサイド突進を狙っていたが、速い結集の日本に先手を取られ、パワーによるターンオーバーもままならなかった。しかもラインアウトにミスが多く、スクラム、キックオフに安定した日本に、FW戦で遅れを取った。

 後半の日本の3トライは、前へ踏み込んだラック形成で先手先手と攻め続けたことで、素早い展開が可能となり、防御態勢の遅れたカナダを後手後手に回らせて、パワープレーによる反撃機を作らせない目論見どおりのトライラッシュだった。

 日本は、突進を受けると防御態勢が崩れ、危うい場面も多かったが、暑さにも参っていたカナダが、抜き切る寸前にパスミスやハンドリングミスを繰り返すなど、結束の弱いヤング・カナダのミス続出に助けられた。

 攻め込んでのラインアウトでミスしたり、突進を受けて防御態勢が遅れるなど、課題を残した日本だが、速いラック結束と速い球出しの連続攻撃、単調なカナダの攻めを封じ込んだ前へ詰めながら外に追い込む組織防御に成長が見られた。

 とりわけ1トライに抑え込んだ防御の集中が、将来への明るさとなった。

            2001年7月9日   大野 晃
 


 
 
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